ごみの埋立処分場には限りがある。特別マンガ『泣き虫オロン』から考える、分別の大切さ

漫画家・佐々木充彦さんが、東京都環境公社のウェブサイト特集『未来をつなぐ ちいさなこと』のために特別に描き下ろした作品『泣き虫オロン』

物語に登場する愛らしい見た目のオロンは、リサイクルボックスのキャラクターで、分別されていないごみが大嫌い。可燃ごみ専用のごみ箱に投げ入れられた空き缶を食べて、「まずい!」と泣き出してしまいます。

『泣き虫オロン』2〜4ページより

少年たちは、怒ったオロンに分別されたごみを食べさせてあげるため、不燃ごみや可燃ごみ置き場などごみが集まる場所にオロンを連れて行きます。しかし、どこに行っても分別されていないごみばかり。

まずいごみを食べ続けたオロンはとうとう巨大化し、最後には大量のごみを吐き出してしまったのでした。

『泣き虫オロン』9,13,14ページより

なぜ、ごみの分別は大切なのか?

一体なぜ、ごみを分別しなければいけないのでしょうか?

日本では年間で東京ドーム100杯分以上ものごみが排出されている

日本では、一般廃棄物(※)の総排出量は令和3(2021)年度で4,095万トンとなっており、東京ドーム約110杯分ものごみが排出されています。

1人1日当たりのごみ排出量に換算すると、890グラム(リンゴ約3個分の重さ)となります。

一般廃棄物:家庭から排出される廃棄物と、事業活動に伴って発生するごみのうち、産業廃棄物以外のごみ

実は、ごみの中にも資源としてまだ使うことができるものが混ざっている場合があります。ごみをしっかりと分別することで資源を再利用することができ、再利用できる資源が増えれば、ごみの量を減らすことができるのです。

それにより、ごみ焼却時に地球温暖化の原因の一つである温室効果ガスの排出量を減らすことができ、ごみ処分場への運搬にかかるエネルギーも削減することができます。

混ぜて捨てない!リチウムイオン電池

『泣き虫オロン』では、不要になったスマートフォンやハンディファンが正しく分別されずに可燃ごみとして捨てられている様子が描かれています。

『泣き虫オロン』8ページより。可燃ごみ置き場にスマートフォンやハンディファンが捨てられています。

近年、リチウムイオン電池とその内蔵製品が原因と考えられる、ごみ収集車やリサイクル施設等での火災が急増しています。

リチウムイオン電池が使用されている製品としては、モバイルバッテリー、スマートフォンのほか、最近ではハンディファンにも使われています。

モバイルバッテリー、スマートフォン、ハンディファンのイメージ写真 / Shutterstock

充電式のハンディファンなどに使用されるリチウムイオン電池は、ごみ収集車で圧縮しながら回収する際や、施設で破砕処理などを行う際に強い力がかかると発火し、場合によっては大きな火災を招くことがあります。

処分する際は、製品の取扱説明書や区市町村が指定するごみの分別方法、小型家電の回収方法を必ず確認する必要があります。

自動販売機横の新機能リサイクルボックスが登場

ごみの正しい分別を周知し、限られた資源を有効活用するために、自治体や企業、団体などではさまざまな取組が行われています。

そのひとつが、自動販売機の横に置かれている自動販売機横の新機能リサイクルボックスです。

写真提供:一般社団法人全国清涼飲料連合会

多くの自動販売機の横には、飲料空容器専用のリサイクルボックスが設置されています。しかし、従来のリサイクルボックスでは、飲料空容器以外の異物の混入が約3割と空き缶やペットボトル以外のごみが捨てられてしまう問題が起きていました。

オレンジ色のカラーが目立つ新しいリサイクルボックスは投入口が下を向いており、飲料空容器以外は捨てにくいので異物の混入を防ぐことができます。
これにより、きれいな空容器の回収ができ、正しく分別収集することで資源循環につながります。

『泣き虫オロン』のラストでは、従来のリサイクルボックスの隣に、新しいリサイクルボックスが描かれています。

『泣き虫オロン』20ページより

環境省によって行われた検証では、従来の自販機リサイクルボックスを新しいリサイクルボックスに置き換えることにより、76%の設置先で異物混入率が低くなりました。

ごみの「埋立処分場」の問題とは?

ごみを分別しなければいけない理由は、資源の有効活用だけではありません。使用できる年数が限られているごみの埋立処分場を長く使うため、正しい分別を行うことも大切です。

ごみの埋立処分場の残余年数

東京におけるごみの埋立ては江戸時代初期から始まり、昭和48年(1973年)に中央防波堤内側埋立処分場の埋立てが、昭和52年(1977年)からは、中央防波堤の外側の海域に現在も使用している中央防波堤外側埋立処分場の埋立てが始まりました。

処分場の写真

東京の海に存在する処分場ですが、その埋立処分量は無限ではありません。埋立てを続けると処分場は満杯になっていきます。埋立処分場にも、「残余年数」という大きな問題があるのです。

東京港内には次に処分場を設置できる水面がないため、現在使われている処分場が、23区最後の埋立処分場となります。この処分場の残余年数は50年以上と推計されていますが、全国の最終処分場の残余年数平均をみると、あと23.5年で満杯になってしまうと言われています。

ごみの分別は、残余年数を延ばすことにつながる

ごみは大きく以下の3種類があり、ペットボトルなどリサイクルできるものは「資源」となります。

  • 可燃ごみ(燃やすごみ)
  • 不燃ごみ(燃やさないごみ)
  • 粗大ごみ(大きなごみ)
  • 資源(紙、びん、缶、ペットボトルなど)

収集されたごみはそれぞれ別の施設へ運搬され、中間処理が行われます。不燃ごみや粗大ごみは、細かく砕いてから選別され、資源となる鉄などを回収しています。選別後、可燃できるごみは焼却を行い減量化した上で、処分場に埋立てられます。可燃ごみを焼却してできた灰の一部はセメント原料などに活用されていますが、多くが処分場に運ばれ、埋立てられています。

『泣き虫オロン』では、話の中で、空き缶が可燃ごみのごみ箱に捨てられてしまいますが、本来はリサイクルができる「資源」です。正しい分別を行い、少しでもごみの量を減らし、資源を増やすことが、埋立処分場の延命化につながります。

ごみを減らすために意識したい、3つのR

最後に、私たちが取り組むべき、3つのRについてご紹介します。3Rとは、

  • Reduce(リデュース)
  • Reuse(リユース)
  • Recycle(リサイクル)

以上の3つの考え方をまとめた言葉です。それぞれについて紹介します。

Reduce(リデュース)

Reduce(リデュース)は、物を大切に使って、ごみそのものを「減らす」ことを指します。

必要ない物を買ったりもらったりしないことや、買い物の際にマイバッグを持参することなどが挙げられます。利用頻度の少ないものを買わず、レンタルやシェアで利用することもリデュースのひとつです。

Reuse(リユース)

Reuse(リユース)は、使える物を「繰り返し使う」こと。

詰め替え用の製品を選ぶことや、フリーマーケットやガレージセールなどを活用することなどが挙げられます。

Recycle(リサイクル)

Recycle(リサイクル)は、資源として再び利用すること。

正しく分別することに加えて、リサイクル製品を積極的に利用することも、リサイクルの取組のひとつです。

限られた資源を守るため、それぞれが自分のできる行動を取ることが重要となってくるのです。

最近耳にする、サーキュラーエコノミーとは?

これまでの経済は、資源やエネルギーを使って製品を生産し、消費する一方向の流れが注目されていました。

サーキュラーエコノミーは、消費されたものが再び生産に戻っていくことにも着目するので循環経済と呼ばれ、さきほどの3Rに加え、原材料の調達や製品デザインの段階から長寿命化、リサイクル資源の活用を前提とした設計を行い、資源を循環して利用します。これにより新たな天然資源の利用や廃棄ゼロを目指すものです。

このサーキュラーエコノミー(循環経済)への移行を目指すことが、現在の世界の潮流となっています。

東京都環境公社では、ごみの発生、排出を抑制していくこと、資源を有効に使うことの大切さを理解していただくため、埋立処分場関連施設の見学を実施しています。