Interview

エコプロ2024:XR技術で東京の自然を体験
〜「TOKYO-ecosteps」へのはじめの一歩〜

地球温暖化対策、自然環境の保護、調査研究など事業を広げ、多様化する環境課題の解決に取り組む東京都環境公社(以下、公社)。個人の環境配慮行動変容を促す「TOKYO-ecosteps」にも力を入れています。

去る12月4~6日に開催された「エコプロ2024」では、東京の自然体験をテーマにXR(クロスリアリティ)技術を活かしたデジタルシアターなどの展示を行いました。そこで今回の職員インタビューでは、総務部経営企画課の椎名さんと同戦略広報室の大林さんに、出展のねらいや手応え、今後の展望について語ってもらいました。


お話をしてくれた人
椎名 政博さん(公益財団法人 東京都環境公社 総務部経営企画課経営企画係)
大林 仁美さん(公益財団法人 東京都環境公社 総務部総務課戦略広報室)


屋内の展示会場で東京に息づく自然を再現

―今回の出展のねらいや背景をお聞かせください。

大林さん:エコプロ展への公社ブースとしての参加は今年で2回目なのですが、昨年は公社の活動を知っていただき、認知度を高めることを目指していました。今回は来場者の方々が公社とつながりを持っていただくきっかけにしたく、インタラクティブな要素を打ち出したいと考えました。

椎名さん:昨年のアンケートには、自然環境について学びたいという声が多く寄せられました。もちろん展示会場に本物の自然を持ち込むことはできません。そこで、XR技術を使って臨場感のある自然体験を提供しようと、外部の専門家と相談しながら、天井まで含めたデジタルシアターという手法を用いた出展となりました。

―とてもきれいな映像が印象的です。制作にあたり、特に工夫した点などがあれば教えてください。

椎名さん:風景素材として用いたのは小笠原諸島の父島と、東久留米市の南沢緑地です。小笠原諸島では昨年度から夏に海岸クリーンアップイベントを行っており、その機会を利用して担当スタッフに撮影をしてきてもらいました。南沢緑地は、東京都が「保全地域」として指定する50カ所のうちの1つです。公社がその維持管理を任されており、撮影には私自身も同行しました。鳥のさえずりがきれいに録れるよう、晴れている日をねらって早朝から出かけるなどの工夫をしています。

―シアターに映されたイラストにタブレットをかざすと、生き物の立体的な画像が見られるのも興味深いです。

椎名さん:南沢緑地を背景にカワセミやキアゲハのARグラフィックが浮き出るようにしました。自然界では動いている生き物をじっくり観察するのは難しいですから、ARグラフィックのプロに依頼して、頭部の方からも後ろからも、お腹側からも全身くまなく見ていただけるよう描き起こしました。

背景に映された生き物のイラストにタブレットをかざすと、立体的な画像で観察できる

デジタルならではの貴重な自然体験

―来場者はどのような様子でしたか。

大林さん:学生や企業など3日間で約1,000名の幅広い層の方にお越しいただきました。シアター入口には、3Dホログラムによるアオウミガメの立体映像を用意してあったのですが、そこに目を留めて「これ何ですか?」と来場者の方から話しかけてくださる場面もあり、デジタルで再現された自然体験に興味を持っていただけたと手応えを感じます。

3DCGホログラムのアオウミガメ

椎名さん:今の小中学生は、物心ついた頃からデジタルツールに囲まれていますね。ですから、デジタルシアターやホログラムを見ても、「ふーん」というクールな反応をする子もいるかもしれないと、実は少し懸念していたんです。でも実際には、生き物のARグラフィックを見ながら「うわ、すっごい!」と喜んでくれたり、風景の映像に引き込まれたりしている様子で嬉しい誤算でした。「南沢緑地には都心から約1時間で行けるけど、小笠原諸島は船で丸一日かかります。どちらも東京の貴重な自然なんです」と伝えると、「へー、行ってみたいな」という声も聞かれ、自分で旅行できる年頃になったときのアクションにつながってくれるといいなと思います。

一方で大人の方々は、小笠原諸島が世界遺産であるとか、里山保全が大事ということは頭では分かっていらっしゃる。でも、どちらも実は東京にあるということは、日頃あまり意識しておられないようです。こうした自然の中で社員研修をできないか、といったお問い合わせもいただきました。

シアターのほかに海ごみや川ごみに関するセミナーも開催

また、個人的にとても嬉しかったのが、目の不自由な方がシアターを体験くださったことです。映像をはっきりご覧になれていたわけではないと思いますが、川のせせらぎや波の音に耳を傾け、「まるで現地にいるような気分になります」とおっしゃってくださったんです。こうして街中にいながら気軽に自然のすばらしさに触れられるのが、バーチャルな自然空間の強みなのかなと思います。

体験をきっかけにエコアクションを促す

―来場してくださった方には、今後どのようなアクションを期待していますか。

椎名さん:こうしたイベント出展は、実はほんの入口だと考えています。今回お越しいただいた方々には、これを機に、ぜひ「TOKYO-ecosteps」にご参加いただければと思います。「TOKYO-ecosteps」は環境に配慮した体験や学びを通し、楽しみながらエコアクションを続けていただく無料のメンバーシッププログラムです。

メンバー登録時に興味のあるアクションを選択すると、LINEやメールで関連情報が届きます。イベントに参加すると「ステップポイント」が貯まり、徐々に「エコステージ」がアップします。登録者ご本人に励みにしていただけるのはもちろん、どれだけ多くの人々のアクションや行動変容につながったかが分かる仕組みになっています。デジタルコンテンツの活用を含め、今後も新たな仕掛けを展開しながら、一人でも多くの方にエコアクションを促していけたらと考えています。