Interview

TOKYOクールシェアスポットマップ作成とクーリングシェルター開設への思い~東京都気候変動適応センター~

気象庁の発表によると、2024年の夏は2023年と並び過去最高の暑さでした。
猛暑や集中豪雨などが続く中、私たちは気候変動に歯止めをかける取組を進めるとともに、健康や生活を守りながら暮らしていかなければなりません。

こうした中、東京都気候変動適応センターでは、暑さをしのげる都内施設を探すことができる「クーリングシェルター・TOKYOクールシェアスポットマップ※」を2024年6月に立ち上げました。企画・制作に携わった佐藤さん・駒井さん、そしてクーリングシェルターに指定されている「東京タワー」の山﨑さんにお話を伺いました。

※令和6年(2024)年度の公開は10月23日で終了し、令和7年(2025)年度の公開に向けて、施設情報の更新や改修などを進めています。
公開日が決まり次第、東京都気候変動適応センターサイト及び公式X(旧Twitter)にてお知らせする予定です。


お話をしてくれた人
佐藤 翼さん(東京都気候変動適応センター 課務担当係長)
駒井 佳奈さん(東京都気候変動適応センター)
山﨑 真吾さん(株式会社TOKYO TOWER 観光本部営業部 ライツ・広報課長)


熱中症対策としてマップの立ち上げへ 制作に込められた思いとは

―まず「クーリングシェルター・TOKYOクールシェアスポットマップ」について教えていただけますか?

佐藤さん:暑さをしのぐための次のような都内施設を検索できるマップです。2024年10月現在、約2000施設が登録されています。

・クーリングシェルター:熱中症特別警戒アラート発表に備えて熱中症予防を目的として提供される休憩場所とされ、空調設備を備えた施設(区市町村による指定施設)
・TOKYOクールシェアスポット:一般的に省エネを目的として、冷房環境を共有するための場所でこれまで涼みどころとしても提供されてきた屋外を含む施設

サイトにアクセスすると、各施設の住所や開放可能日等、受入れ可能人数、URLなどの基本情報を検索できます。GPSに対応しているので、自宅や外出先などご自身がいる場所の周辺を探して、経路も表示することができます。

―なぜマップを立ち上げることにしたのでしょうか?

東京都気候変動適応センターの佐藤 翼さん

佐藤さん:皆さんも体感されていることと思いますが、特にここ数年の暑さは異常ですよね。熱中症による死亡者数は増加傾向が続き、健康被害は深刻です。今後極端な高温が発生するリスクが高まると見込まれているため、熱中症対策の強化に向け「改正気候変動適応法」が令和6年4月に施行されました。「熱中症特別警戒アラート」が創設され、熱中症特別警戒アラートが発令されたときには、予め区市町村が指定した「クーリングシェルター」を開放することなどが定められたのです。

私たち「東京都気候変動適応センター」は、気候変動の影響による被害を回避・軽減する「気候変動への適応」を推進するため、情報提供や区市町村への支援、普及啓発活動を行っています。対策が必要な
5分野(自然災害、健康、農林水産業、水資源・水環境、自然環境)のうち、「健康」は、熱中症により人々の健康を直接害することから、予防へのスピーディーな対応が求められています。改正気候変動適応法を受け、都民や観光で東京を訪れる皆さんがクーリングシェルターやTOKYOクールシェアスポットをすぐに見つけられるよう、わかりやすいマップを作ることにしたのです。

―マップを制作するにあたって、工夫したことはありますか?

東京都気候変動適応センターの駒井 佳奈さん

駒井さん:誰にでもわかりやすいデザインを心がけました。例えば、高齢の方なども見やすいよう、文字を大きくしたり、スポットを示すアイコンを濃い色にしたりしています。また、外国人の方もアクセスできるよう、日英中韓の4か国語で対応しています。施設情報については、登録を行っている区市町村からの情報をとりまとめて更新する必要があります。なるべく最新の情報を提供できるよう、随時更新しています。

―マップへの反響はいかがですか?

駒井さん:マップ立ち上げ時には、ニュースなどで大きく取り上げられました。暑さに対する社会の関心も非常に高いので、この夏のアクセス数は1万件を超えました。登録施設数は増えており、今では約2000施設に上ります。

クーリングシェルターとして快適な空間を提供する「東京タワー」

株式会社TOKYO TOWERの山﨑 真吾さん

―「東京タワー」は、港区内の民間施設として初めてクーリングシェルターに指定されたそうですね。

山﨑さん:東京タワーは昨年開業65周年を迎え、来場者数は累計で1億9,000万人を超えました。多くの方々を受け入れる設備や経験則がすでにあることから、港区からの要請を受け、7月に区内の民間施設としては初めてクーリングシェルターに指定されました。東京タワー下のビル「フットタウン」の1階から3階にある約100席をクーリングシェルターとして提供し、「熱中症特別警戒アラート」が出ていないときでも営業時間中は自由にご利用いただけます(2024年10月23日まで)。

クーリングシェルターとして利用できる館内スペース

―皆さんからの関心や反響はいかがですか?

山﨑さん:近年は、夏は猛暑のため日中の外出を控える方が増えており、社会全体として屋外施設だけでなく、屋内施設でも夏の利用者数は減少傾向にあります。そのような中、クーリングシェルターに登録されたことは、様々なメディアで取り上げられ、多くの方に関心を持っていただきました。CSRの取り組みとして意義がありますし、より多くの方に東京タワーを快適にご利用いただければ嬉しいです。東京タワーは、これまで取り組んできた、自社の太陽光発電によるライトアップの点灯や、ペットボトルの水平リサイクルなども含め、今後も世界中の方にお越しいただく集客施設として、環境を意識した取り組みを進めていきたいです。

気候変動への適応を「自分ごと」に

―最後に、皆さんへメッセージをお願いします。

佐藤さん:今後も気温上昇が予想される中、一人ひとりが暑さから身を守ることが非常に重要です。
クーリングシェルターやTOKYOクールシェアスポットが身近にあることをより多くの方に知っていただき、利用していただければと思います。

駒井さん:公式X(旧Twitter)で夏場の期間中、毎日の暑さ指数予報やマップについて発信していますので、ぜひチェックしてみてください。今後は、学校での環境教育を含めて、子どもから大人まで幅広い世代に、気候変動への適応を「自分ごと」としてとらえてもらえるよう取り組んでいきたいです。