東京都環境科学研究所

評価結果 H22-2-8

平成22年度第2回外部研究評価委員会 継続研究の事前評価結果

研究テーマ
土壌等におけるダイオキシン類の評価手法に関する研究
研究期間 23年度~25年度
研究目的 (1) 自然環境下におけるダイオキシン類の組成変動を検証し、より精度の高い汚染原因評価手法を確立する。
(2) 水試料を補完する媒体を検討し、より適切な水環境汚染状況評価手法を確立する。
研究内容 (1) 高濃度汚染土壌等の汚染評価手法に関する研究
 以下の室内実験等により、汚染土壌等の自然環境下における組成変動を検証し、より高精度な汚染源評価手法確立のための新たなデータを収集する。
①太陽光及び紫外線照射、加温による組成変動の検証
 汚染土壌等に太陽光や紫外線を照射し、照射時間や紫外線量に伴う濃度、組成変動を調査する。調査対象とする汚染土壌等には銅、鉄等の重金属類を添加し、化学的要因による組成変動も併せて検討する。また、加温に伴う組成変動と大気中に揮発するダイオキシン類の濃度、組成等についても調査する。
②水への接触による組成変動の検証
 汚染底質等を水と長期間攪拌接触させ、経時的なダイオキシン類の水への移行と組成変動について調査する。
③高濃度汚染試料等の分析、汚染源等に関する情報の収集
④より正確な汚染原因評価手法の確立に向けた検討
(2) 水域環境の汚染評価手法に関する研究
 台場をはじめとする東京湾の複数地点において、様々な気象環境条件下における貝類及び海水を採取して、それらのダイオキシン類等を分析し、水域環境の実態評価を行う上での、水試料補完媒体としての貝類の有用性を検証する。
(3) 分析法の検討及び情報の取りまとめ
事前評価 A3名、B2名
評価コメント及び対応 ・具体的方法が開発されている。目標とする精度を設定する事が望ましい。原因物質と考えられるもののデータベースは出来ているか。
⇒H23年度以降は、詳細な事項について検討し、汚染原因特定の精度を上げることにより、行政支援に一層貢献できるよう努めます。原因物質(発生源)については、これまでに当所で蓄積してきた分析結果や、文献等から種々の情報を集積し、整理を進めています。
・ダイオキシン問題は、大気や水中の濃度だけを見れば大幅に低下してきており、市民の関心という点で薄れてきている面もあるが、現在もまだ重要性が失われたわけではなく、取り組みの必要性は残っている。特に成分比率に注目した研究計画となっており、ポイントの絞り方として適切であると評価できる。
⇒今後も、可能な限り種々の高濃度汚染地に関する試料、情報等を収集して、それぞれのフィールドごとに各種情報を解析することで、より精度の高い発生源解析手法の構築を目指していきたいと考えています。
・水生生物を利用することで水環境の実態把握を精緻化するという目的はよく理解できるが、指標生物を最初から1種に絞り込んでよいのかという疑問がある。代表性があることを何らかの方法で説明できるようにしておくことが望ましい。
⇒指標生物として取り上げる予定のムラサキイガイは、東京湾における生息域が広く、とくに汚染水域における現存量が多いこと、魚類と異なり移動性がなく生息水域の代表性に優れること、採取し易いこと、及び適度な大きさで解剖も容易であり分析試料として扱い易いことなど、様々な側面で優位性を持つことから、最適な分析対象であると判断しました。これに続く候補としては、アサリ、イボニシ等を考えていますが、生息域その他の点でやや限定的となります。
・ダイオキシンについてはまだ難しい問題が残されており、継続的な取り組みを今後もしっかり続けていただきたい。二枚貝などの生物濃縮の活用は、環境の長期的トレンドや場所毎の汚染の違いをスクリーニングする上で重要な手法であり、定常的な環境監視の中に積極的に取り入れてほしい。
・生物においては代謝や排泄の違いなどで異性体組成はかなり変化するため、ある種の色眼鏡を通した環境の監視にもなる点は注意を要する。さらに、種の変遷、えさ生物の場所毎の違いなどが見かけの濃度変化を引き起こす可能性も考えられる。東京都内の沿岸定点監視と割り切れば、何らかのパッシブサンプラの利用も考えられ、あわせて基礎検討をしていただきたい。
⇒生物を分析対象とする場合、その利点だけでなく、欠点もあることに注意を払いつつ対応していきたいと考えています。
・高濃度土壌汚染の報告事例が増す中、その汚染原因の評価手法を確立することは重要である。特に、ダイオキシン類については、その対策特別措置法が施行されており、精度の高い評価法の確立が急務である。水環境の汚染評価手法の確立にあたっては、継続研究⑦「生物生息環境・自然浄化機能に関する調査研究」と緊密に連携して実施する必要がある。
⇒貝類の採取と分析については、継続研究⑦と緊密に連携を取りつつ、⑦で実施する元素類の分析結果もダイオキシン類と合わせて解析し、多面的に検討したいと考えています。
・柱状資料から、過去のデータの取得ができ、現在と比較できるところが評価できる。水生生物を試料とするところに新規性があるが、バラツキが大きいなどの困難も予想される。
⇒バラツキの原因因子の影響を避けられるよう試料採取時期や分析用個体の選別に留意しながら取り組みます。