東京都環境科学研究所

評価結果 H23-2-1

平成23年度第2回外部研究評価委員会 新規研究の事前評価結果

研究テーマ
自動車の環境対策の評価に関する研究
研究期間 24年度~26年度
研究目的  自動車排出ガス規制の効果を検証するとともに、次世代自動車等低公害車の排出ガス等の実態を把握する。
研究内容 (1)自動車排出ガス規制等の効果検証
 ポスト新長期規制適合車等の最新規制適合車を用いて、法定試験や東京都実走行パターン等の各種モード(オフサイクル、エコドライブ等を含む。)による排出ガス(N2O(亜酸化窒素)等の未規制物質を含む)の測定・分析を行い、排出実態の把握と共に排出係数作成の資料を得る。また、従前規制適合車との比較等を行うとともに、これらの車両の排出ガス低減技術等についての評価を行う。
(2)次世代自動車等低公害車の排出ガス等の実態把握
 最新型のハイブリッド車等について、燃費特性等を把握し、環境改善や温暖化対策に向けた効果等について検討する。
事前評価 A3名、B2名
評価コメント及び対応
  • ポスト新長期の対応するために、自動車の排ガス制御(低減技術)の高度化、電子化が必須となった。すなわち、緻密なエンジン制御を実現するためにIT技術の導入、排ガス触媒の作動条件を保っている。認証のテストサイクル(トランジェントモード運転)に対しては、良くチューニングされ、排出ガス規制をクリアしていても、リアルワールド走行(実路走行時)になると(走行時のエンジン使用条件が広範に渡るため)、排出ガス量が増加することがあり(ホットスポット)、両者の排ガス量に解離が生じることが懸念されている。実際に今年度の当研究所が行った試験において、これに該当する車両が発見された。
     今後も引き続き、国が定める認証モードでの計測に加えて、東京都モード、及びリアルワールドでの走行試験を実施し、今後のオフサイクル対策、九都県市の低公害車の導入施策の拠りどころとなる基本データ蓄積を確保されたい。
  • 排出ガス低減技術の高度化等により、シャシダイナモによる測定のみでは、リアルワールドの追求が難しい面が出てきています。車載型計測装置を用いた路上調査については、体制面等から厳しいものがありますが、機会を捉えながら路上走行時のエンジンや触媒の状況等を把握し、リアルワールドでの排出ガス実態に近づけるよう心掛けていきたいと考えています。
  • 東京都のみならず、九都県市(首都圏)や六大都市(首都圏・近畿・中京)等の自動車環境対策の連携自治体の中での科学的知見を担う役割を果たせるように努めて参ります。
  • リアルワールド試験は、排出ガスのインベントリ解析(排出ガスの定量的調査)を行うために必須のデータといえる。車載型の排ガス計測装置を導入する必要があることから、工数および経費の面で負担がかかる。東京都以外の他の地方自治体では、全く手が付けられていない状況にあり、当研究所のこの分野における役割は大きい。
  • 自動車の環境対策は、当研究所の過去の研究の歴史の中でも、特にウェイトの高いテーマである。今回はリスタートの形であるが、今後さらに拡大していくことが期待されるテーマといえる。
  • これまでさまざまな規制が進められてきたが、対策効果の評価が十分に行われてきたとはいえない。その点において、本研究は社会的価値の高い研究といえる。
  • 今回はN2O等の未規制物質に目が向けられていることが1つの特徴であり、注目される。
  • 無効化機能の横行は、重大な社会問題であり、既に自動車工業会による対策が進みつつあるとはいえ、基礎データの蓄積の必要性は継続しており、社会的重要性の高いテーマといえる。
  • テーマとしては間違いなく有用性の高いものであるので、着実にデータを積み重ねることが期待される。
  • データの蓄積とともに活用される調査・計測に努めて参ります。
  • 交通問題の影響のもっとも甚だしい東京都ならではの貴重な情報蓄積であり、これまでの蓄積をベースにさらに効果的な研究推進を望む。
  • 継続的なデータの蓄積があり、排ガスの監視のためにも、今後もこのような測定は必要である。
  • 無効化機能の追求は、メーカーに法令を遵守させるという観点から重要であるが、自動車の燃費向上とトレードオフの関係にあるのであれば、法令改訂も視野にいれて、最適な姿の提案を目指していくべきと考える。
  • 無効化機能に関しては、今回の調査結果を受けて、国は禁止事項を明確にして、法に基づく規定を策定することとなりました(平成24年3月30日公表)。
  • N2Oは、確かに温室効果ガスであるが、排ガス全体に占めるN2O排出の寄与の度合いが判然としない。
  • N2Oについては、都内排出の寄与から見ると、今後自動車の排出が多くなると考えても、2%程度以内と考えています。しかし、昨今販売された車両の中にはCO2排出量の40%程度の排出がある事例も確認されています。メーカーやユーザーに温暖化対策としての低CO2(燃費)対策を求めている中で、総合的に矛盾しない対応が必要であると考えます。