東京都環境科学研究所

評価結果 H27-1-2

平成27年度第1回外部研究評価委員会 終了研究の事後評価結果

研究テーマ
資源循環に関する研究・最終処分プロセスに関する技術開発
研究期間 24年度~26年度
研究目的 都市ごみに含まれる希少金属・主要金属は、鉄やアルミなど一部の資源を除いて、不燃ごみは破砕後、可燃ごみは焼却・溶融等を経て最終処分場に埋め立てられている。資源の循環利用においては、廃棄物に含有される全ての資源が利用できるものではなく、資源循環を阻害する物質や、逆に随伴されることにより効率良く循環する物質もあるため、希少金属以外の物質にも着目し、焼却灰や溶融物、飛灰などの組成実態を明らかにしていく。また、最終処分場では、浸出水に含まれるアンモニア態窒素を硝化するため、多量の動力費や有機物を必要としている。最近、有機物を投入することなく、下水汚泥処理工程から排出される高濃度アンモニアを処理する方法が注目されており、処分場への適用によるコスト削減の検討を行っていく。さらに、一定の条件下において廃棄された石膏ボードからの硫化水素発生事故が起きていることから、硫化水素の発生機構や抑制方法について、技術開発を行っていく。
研究内容
  • (1)資源循環に関する研究
  • ①都内における希少金属・主要金属等の資源循環可能性量の把握
  • ②資源循環に関する関連情報の収集・静脈物流の効率化
  • ③資源循環手法の検討と事業化のための課題抽出
  • (2)最終処分プロセスに関する技術開発
  • ①最終処分場浸出水の効率的処理技術の検討
  • ②最終処分場維持管理に関する技術情報の収集
  • ③廃石膏ボード等の処理・資源化技術の検討
事後評価 A3名、B2名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 焼却灰の粒径別の有害成分の含有率の計測データは、Cr2O3及びPbOは、粒径によらずほぼ一定の比率であるが、Clは、焼却灰の粒径が小さいほど、含有率が大きくなる。これは、Cr2O3及びPbOは焼却灰の粒子内部に均等に含有しており、一方で、Clは粒子の表面に(あるいは表面近傍に)選択的に付着していることが考えられる。
    (粒子径の2乗)/(粒子径の3乗)に比例しているか否かについて検証されたい。Clの付着は、表層のみに限られていることが推論でき、今後の対策に有益な知見を与える。
  • カルシウムについては、比較的粒子表面に付着しやすいという報告もあるため、Clについても同様な現象が起きている可能性はあり、学術的に興味深いと考えます。粒子径が大きければ輪切りにし、対象面積を最小にしてX線を当て、表面と内部の差を測定する等検討していきます。
  • 詳細にデータを取っており、この点は評価する。
  • まとめ方にもうひと工夫が必要。たとえば、焼却灰の「粒径別重量比率」と「粒径別金属比率」の図を合わせたら、セメントの原料化という面からより深い知見が得られるのではないか。
  • アナモックス反応、実際の処理場への適用という観点から考察が必要。
  • ・頂いたアドバイスのとおり、粒径分布と組成を組み合わせることで、各粒径ごとの絶対量としての組成を導くことが出来ると考えます。
    ・浸出水処理技術については、水処理メーカーや大学等との連携も検討し、実際の処理場への適用可能性について、引き続き研究を行っていきます。
  • 実際の焼却灰(実試料)を分析,解析しており実用に適用できるか否かの貴重な判断材料が得られている。
  • セメント原料化の検討結果については,主要成分と有害成分が粒径により背反する結果となっているが,定性的な結論でなく粒径で考えたときどの程度の粒径が最適なのかを判断していただきたい。
  • アナモックス反応は有望と感じられるので,可能であればなんらかのかたちで検討は続けていただきたい(あくまでも希望です)。
  • 焼却灰のセメント原料化については、湿式脱塩による塩素の除去や、磁選や強磁選による鉄やアルミに随伴させた阻害金属成分の除去が出来れば、比較的低コストである篩選別を組み込み、粒径の小さい焼却灰を回収することで、より焼却灰のセメント原料化が容易になるものと考えます。
  • 研究目的・手法ともに明確で、最終処分プロセスにおける技術開発に関しても、水温20℃以下で窒素除去能力が低下することを明らかにした点等は評価される。
  • 研究成果を、国内での学会発表や年報論文だけでなく、国内外の査読付き学会誌に積極的に投稿することが望ましい。
  • 得られた結果にさらに詳細な解析、論文のレビューを行い、査読論文等に積極的に投稿していきます。
  • 資源循環と最終処分プロセスにおける的確な技術課題の設定と、段階を追っての研究結果の適切なまとめがされていて、後継研究への展開が納得性のあるものになっていると思います。