東京都環境科学研究所

評価結果 H27-1-6

平成27年度第1回外部研究評価委員会 継続研究の中間評価結果

研究テーマ
浅場・干潟等に形成される生態系の機能に関する研究
研究期間 平成25年度~平成27年度
研究目的 閉鎖性水域である東京湾では、依然として赤潮が頻発し、底層水が無酸素化するなど、水質悪化の負のスパイラルに陥っている。一方、沿岸域の浅場・干潟の環境は比較的良好で、様々な生物が生息している。浅場・干潟自然浄化能を定量的に明らかにするとともに、生物生息の実態を調査し、浅場・干潟の機能を総合的に評価する。これらの結果を東京湾の水環境改善に活用する。
研究内容
  • (1)浅場・干潟などにおいて水質・底質や生物の生息状況を調査する。
  • (2)その上で、浅場・干潟などの水環境に形成される生態系の機能を明らかにし、その価値(自然浄化能、生物多様性等)について評価する。
  • (3)東京湾沿岸部において目的とする水質レベルを達成するために必要な施策を検討し、施策の組合せ(ベストミックス)について検討する。浅場・干潟などの創出によって得られる自然浄化能ついても検討する。
  • (4)水環境情報の総合解析を行い、水質、底質、地形、生物情報等を有効に活用する。
中間評価 A3名、B2名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 本研究は、当該研究所で行われている他の研究プロジェクトは、大気、水質、土壌に含まれる (人口起源および天然起源) 有害化学物質の濃度計測およびインベントリー解析に焦点が当てられている。その中にあって、本研究は、唯一、東京湾水系にて形成される生態系の機能について、水質・底質における溶融酸素量、富栄養化当量(栄養塩類)、指標細菌として大腸菌数のモニターを多角的な実態調査、計測を通じて、総合的な分析により、河川から流入する汚染物資が浅場・干潟等に形成される生態系に及ぼす影響の評価を試みている。その点で、他の研究とは一線を画し、研究に長年取り組まれている研究員の皆さんの尽力に敬意を表するものである。今後は、環境改善対策について具体的な提案・提言を行うことを期待する。
  • 研究タイトルを「浅場・干潟等に形成される生態系の機能に関する研究」から「浅場・干潟等に形成される生態系調査及びその環境負荷低減に関する研究」と改められたい。
  • 本研究は3年計画で進めており、2015年度が最終年度なので、研究タイトルを変えることはできませんが、2016年度からは継続新規という形で予算要求しており、環境負荷低減という観点も加えて研究を進めていく予定です。改善対策に資することは、本研究の重要なテーマとなっています。
  • 緻密なデータを取っており、行政への反映が期待できること。
  • テーマ上、研究より調査になっている。
  • 今後は、解析等により研究的な面を強化してほしい。
  • 現在、生物相の実態把握や水質・底質等の測定データの蓄積を行っています。最終年度には、他の情報もあわせて総合解析し、研究結果を公表していきます。
  • 検討結果が浅場の造成につながったとのことで評価できると考えます。
  • 貧酸素水塊の存在が底泥からのリンの溶出を促進することが確かめられている。リンは河川ばかりでなく底泥からも溶出するのであれば,赤潮の発生に寄与(再利用)されていることになり重要な検討結果と考える。
  • 降雨時の大腸菌の増加については,発生源の特定および増加メカニズムを追求していただきたい。
  • 降雨時の大腸菌の増加要因や発生源に関する調査を東京港~隅田川~新河岸川の範囲で2015年度実施し、流入負荷が大きい箇所を特定していきます。また、室内実験も含め大腸菌数の時間変化(増加・減少)の実態を把握していきます。
  • 東京湾岸部の浅場・干潟において、詳細な水質と底質の測定を行うとともに、大腸菌数や溶存酸素の鉛直分布を分析して降雨との関係を明らかにする等、東京湾内の水質改善に資する研究成果を挙げたことは高く評価できる。
  • 大腸菌数と降雨の関係については、今後さらに広域での調査を実施して発生源の特定を試みてほしい。
  • 研究成果を学会誌(査読付き)へ投稿するよう助言したい。
  • 大腸菌の増加要因や発生源に関する調査を上流域の埼玉県、さいたま市と共同で実施していきます。また、東京港内の大腸菌を低減するための独自調査も行っていきます。2015年度終了後、研究成果は水環境学会誌などの専門誌に投稿する予定です。
  • 最終年度(2015)のまとめに向けて、都下海域の水質と生態系の動態に関する体系立った知見がいろいろと積み上げられてきていることがわかった。
  • プレゼン拝聴時に質問すればよかったのですが、ちょっと理解不足の点があります。
  • 水深が浅いところで溶存酸素が大きく保たれるので、浅場造成で環境改善-- これはなんとなく妙な感じもします。深場であっても表層水は酸欠ではないことを示す図がありました。浅場を作ってもそれによって深場の貧酸素水の水質が改善されるわけではないのでは? 東京湾から深場をなくすほど大規模にやれば貧酸素水塊ができなくなるかとは思いますが。
  • 御指摘のように東京湾沖合部については、浅場造成は困難です。沖合部の表層の酸素濃度が高いのは植物プランクトンの光合成作用によるものです。水質の悪い都内運河部は植物プランクトンは少なく、表層水の酸素濃度は低い状態です。運河部の護岸は垂直であり、水深が急に深くなっていて、浅場がほとんどありません。そういった水域の護岸付近に浅場を造成すれば、大気からの酸素供給もあり生物が生息できる環境が確保されます。貧酸素水塊の問題は、2016年度以降の大きな研究対象となる予定です。