東京都環境科学研究所

評価結果 H28-1-3

平成28年度外部研究評価委員会 終了研究の事後評価結果

研究テーマ
東京都におけるヒートアイランド現象等の実態に関する研究
研究期間 平成25年度~平成27年度
研究目的 東京ではヒートアイランド現象と地球温暖化の進行によって、過去100年の間に平均気温が約3℃上昇しており今後その影響が種々の方面に出現することが予想されている。この進行しつつあるヒートアイランド現象等の影響を確実に把握し都の施策に反映させるため、都におけるヒートアイランド現象に関する最新の現状を観測結果等により見直すことを目的とする。
研究内容
  • (1) 東京都における熱環境の実態把握(大崎・目黒エリアの熱画像撮影)
    ①計画準備、②ヒートアイランド現象のデータ解析、③現地調査、④熱画像の撮影、⑤熱画像データの解析と可視化
  • (2) 暑熱対策効果の検証
    ①効果の検証、②新たな課題の抽出
  • (3) ヒートアイランドに関する情報収集
  • (4) 気候変動影響等に関する情報収集
事後評価 A3名、B2名、C1名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • ヒートアイランド現象を物理的な捉え方ではなく、人への影響という視点から捉えることに関心が向けられたことが大きな進歩。
  • ただし、熱中症患者の緊急搬送の統計調査にとどまっている。ヒートアイランド現象の実態の把握及びヒートアイランド対策に資する省エネ対策の提言を試みているが、それらが明らかになっても、活かされないことが危惧される。それは、物理量が熱中症患者発生や死亡者の発生を評価関数に置いていないことに原因がある。ヒートアイランド現象の実態(物理的数値)が熱中症被害とどう関わっているのか、具体的な事例調査を積み上げるべき。
  • 発生場所・時間別熱中症搬送者数データや現地調査データを用い、ヒートアイランド現象の実態が熱中症発生とどう関係しているか明らかにしてまいります。
  • 失礼だが、評価できる点、推進すべき点等見当たらない。
  • 「密集住宅地基礎調査」は熱中症で搬送された患者のデータとの比較が必要である。何が、熱中症にさせたのかの解析があって、初めてこのデータが生きると思う。
  • 発生場所・時間別熱中症搬送者数等のデータの詳しい解析も行いつつ、調査研究を進めていきます。
  • 研究成果が都の環境基本計画に反映されている。
  • 熱中症救急搬送者数の推移や地区別円グラフなどは,熱輻射と直接相関があるように表現されている。例えば円グラフについて言うと,例え木密地域の熱輻射がオフィスビル地域の次だとしても同じデータ(円グラフ)が得られる可能性が高いのではないか?
  • 今後、木密地域における詳細な暑熱環境計測を行い、熱中症搬送者数と相関が高い温熱要素を明らかにしてまいります。
  • 航空機による計測から、地表面状態(密集住宅地、オフィスビル等)による赤外放射量の違いをある程度把握できた点は評価できる。
  • 再開発地区で赤外放射量が減少した原因を、公開空地設置と緑地導入によるとしているが、再開発による建物高層化で日陰面積が増えたためではないか?再開発によって、実際にどの程度緑地が導入され面積が増えたのかを、定性的ではなく、数値等で定量的に示す必要がある。ヒートアイランドは、本来、赤外放射量(地表面温度)で評価するのではなく、気温・湿度等の気象要素やWBGTなどの体感温度で評価するのが望ましい。
  • ご指摘のとおり、日陰の影響や緑地面積の定量的解析も重要と考えます。今後、地上気象観測によって得られる赤外放射量以外の熱環境データについてもWBGTも含めて詳しく解析し、ヒートアイランド現象の実態把握をさらに強化致します。
  • 準備と取得データの整理に時間のかかる測定を地道に行い、地理情報化と熱放射の傾向を定量的に解明している点に敬服する。積極的に外部発表も行い、研究の結果は、ヒートアイランド緩和対策とその効果を検討する上での、貴重な情報になるものと考えられる。
  • 取得されたデータを用いて、再開発地区における放射環境の分析の例示があったが、膨大なデータの中にさらに参考となる貴重な傾向が埋もれていないか、十分に考察、活用すると良いのではと思う。
  • これまでに当研究所において実施してきた観測のデータや、その他の既存の気象ビッグデータを用い、暑熱環境に関してさらなる解析を行い、考察を深めてまいります。
  • これまでの経緯を踏まえ、既成の計画は実行すればよいと思う。放射環境がよくキーワードに出てくるように思うが、やはりまず気温そのものだと思う。顕熱伝達と人工熱も大事ではないかということ。計画に空調のミスト技術調査が入っているのはその点でおもしろい。
  • 方法が間違っている、こう取り組むべきだ、というような確固たる注文ではないが、研究計画の中に社会的要請にどう応えていこうとするのかを打ち出すパワーがあまり感じられないように思われ、物足りない。近年、夏場には公共放送などでも「水分をとりましょう」「エアコンを節約せずに」など繰り返している。そういう直接的な知恵か、逆に根本的な「エネルギー消費の合理化、温暖化の緩和」的な施策かの間で、「街がどれほど暑いかをもっとよく測ろう」はピンボケな感じを受ける。
  • 熱中症発生抑制といった社会的要請に応えるための調査研究を行ってまいります。