東京都環境科学研究所

評価結果 H29-1-4

平成29年度外部研究評価委員会 継続研究の中間評価結果

研究テーマ
水素を活用したまちづくりに向けた調査
研究期間 平成28年度~平成30年度
研究目的 遠隔地の再生可能エネルギー由来のCO2フリー水素の利活用や、水素エネルギーマネジメント構築に向けた課題を整理し、解決策を示すことで、まちづくりにおけるCO2フリー水素の活用を目指す。
研究内容
  • (1) 都内でのCO2フリー水素利活用に向けた検討調査
  • (2) 水素エネルギーマネジメント構築に向けた調査
H28中間評価 A1名、B4名、C1名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 水素の供給価格、経済性、LCA解析、全てが甘い見通しの上で計画が構築されており、CO2の削減の視点ではなく、「水素社会の実現」が目的化している危惧が拭いきれない。
  • 環境省の地球環境部会では、地球温暖化ガスを2030年に30%削減、2050年に85%削減を目標したシナリオを構築しているが、「水素社会の実現」をまちづくりとしてローカルの取り組みであることを明確にして推進すべきと思われる。
  • ・今回のCO2フリー水素の利活用に係る中長期的な経済性評価においては、水素利活用機器のコスト低減を見込み、比較対象の石油系燃料の将来価格については高位の予測価格に前提を置いた条件設定を行っています。この上で、コストが厳しいCO2フリー水素について、CO2削減を進める上での価値創出等の方策について検討を進めて行きたいと考えています。
    ・現在、国事業の中で、様々な地域において、地域の特性を踏まえた水素利用の実証事業が進められています。
    都では、水素社会の実現に向けた戦略目標を掲げると共に、2020年頃までの取組方針を示していますが、当研究所では、都が水素社会に向けた取組を進めていく上での客観的な情報を提供しつつ、都の特性を踏まえた今後の展開について検討して行きたいと考えています。
  • 資料内に計算した時の根拠のデータがないため、評価が困難。
  • 福島~東京のCO2フリー水素のコスト試算等におきましては、産総研や関係企業等で構成した調査連絡会議の意見を聴きながら、可能な限りの文献等を収集し、一定の根拠あるデータとして算定を行なっています。
  • 風力発電で発電した電力をわざわざ水素に変換する必要があるのか、疑問。この件は、スポンサーの要求事項ですので変更は難しいと思うが。
    特に離島に水素を運ぶのではなく、離島でこそ風力発電を実施すべき。
  • 再エネ電力は出力変動が大きいため、その電力を効率よく活用する上で、水素は有効な手段の一つと考えられています。また、再エネ電力から水素を製造し、貯蔵した上、必要な時に必要な場所で活用する様々な実証実験が国内で行われておりますが、都内への展開やその有効性について検討して行きたいと考えています。
  • 今が水素社会の検討をしてみる時期としては適当であると考える。実現可能性についてコスト的な問題も伴うので首都圏(関東)では東京都で検討すべき内容と思う。
  • 基本的なことであるがCO2フリーの中身が良く理解できなかった。福島県から供給されるとなぜCO2フリーなのか?太陽光や風力から作ってもCO2フリーとは言えないと思うが見解は如何に?
  • 再エネから作る水素を「”いわゆる”CO2フリー水素」と称しており、国においては「CO2フリー水素」の定義を明確化していく方向にあります(欧州では「CertifHyプロジェクト」として、水素製造時CO2排出に応じた区分を行っています。)。
  • 水素利活用モデルの具体的調査内容が不明確で評価不能である。これだけの予算を使った研究にもかかわらず、学会での発表件数がないのは疑問である。
  • 水素利活用モデル(7種11ケース)については、
    〇事例調査を基に建物群の中での建物用途や床面積を設定しマクロ的に水素需要を推計した大規模/中規模開発モデル
    〇導入する水素利用機器を設定し、建物の実際のエネルギー需要データ等を基に効果的な運転方法までを考慮して水素需要を推計した事務所周辺モデル
    など、それぞれのモデルで組立ての考え方等が異なりますが、昨年度の調査の中では、都が今後の取組を進める上で、実現性(現実性)を判断する材料を提供することに重きを置き、整理を行ないました。
    なお、先端的な研究成果等の学会を通じて、社会への還元していくことは当研究所の使命ではあるものの、本調査に関しては、現況において、調査・検討結果を速やかに都へ提供していくことも優先事項となっています。また、CO2フリー水素のコスト試算においては、現在進行中の実証実験等のデータを踏まえ、今後の点検・修正が必要なことから、調査連絡会議において、当面は結果公表に当たっての配慮が必要とされています。
    昨年度の学会発表はありませんが、29年度日本建築学会大会の中で、建物用途における水素需要の推計手法についての発表を行います。今後は、出来る限りの研究成果の発信に努めて行きたいと考えています。
  • 水素利活用7モデル11ケースの経済性を評価、比較し、CO2削減効果と重ねてCO2フリー水素の活用策を手堅く探索されている点が評価できる。
  • 都内と離島で軽油価格が倍ほど違うのに、資料では両者が同じとして、水素経済の有効性が比較されているように見える。現時点で投資回収困難なことは研究前から分かっていることで、それを結論に挙げるのではなく、どこにどう活かすのが最も合理的なのか、さらに踏み込んだ探求と、外部発表を期待する。
  • 今後の島しょでの水素エネルギーの活用に関する検討については、当研究所が実施するのではなく、環境局において別途外部委託により進めることとしています。
    ・本年度の調査では、東京都のエネルギー事情や地域の特性を踏まえ、低炭素化に資する水素を広く対象に扱い、水素利用の都内での適地性を考えながら、今後の取組に資する検討を行っていきます。
  • 政策的なテーマなので疑問があってもやってみるものと理解している。(自然科学や技術的突破口の探索は担当者が可能性についての見通しを持って挑戦するものであり、可能性の見通しのない挑戦はあまりないが。)
H29事前評価 A1名、B3名、C1名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 水素エネルギー社会について検討することによって,他のエネルギーの価値や現状のエネルギーの使い方についていろいろな問題が浮き彫りになっていくと思うので,検討を精力的に推進していくべきと思う。
  • 水素エネルギー社会がコスト的に見合うか否かを早い時期に見定めでおくことが肝要と思う。
  • 将来に向け、水素をエネルギーとして利用していくことには多くの課題を残している中で、アドバイス事項を念頭に今後の調査・研究を進めて行きたいと考えています。
  • 初年度の分析を活用する計画になっており、具体的な事業モデルの提案まで実施される点は、重要なことと評価する。
  • 研究テーマ名をレトロな内容に変更されたついでに、拘っていた選手村への適用から離れた、より汎用性の高い取り組みに変えることも、考えられないかと思われる。
  • エネマネのシミュレーションやシステム構築ということですが、どのようなものができるのかよく理解できていません。誰がどのように使うのか、汎用性や有効期限はどうなのかが気になる。
  • 街区或いは建物内でのエネルギー需給のマネジメントによりエネルギーやCO2の削減を図る取組が進められています。また、一部のゼネコンにおいては、国や自治体が普及を目指す、ゼロ・エネルギー・ビルディング(ZEB)の一環として、水素蓄電システム(余剰電力等での水素製造、水素貯蔵、水素発電)を組入れる研究等が実施されています。
    当研究所においては、東京都のエネルギー事情や地理的な特性を踏まえて、都内の中規模ビル等への水素蓄電を導入した場合のモデルを仮想し、エネルギーやCO2の削減効果等をシミュレーションプログラムを作成して評価を行うこととしています。
    検討のターゲットは、エネマネの進展が図りづらい中小規模のビルを想定していますが、本研究においては、水素蓄電システムと蓄電池との効果比較を行うとともに、大手ゼネコンが長期的な視点の中で水素蓄電の検討を行っていることも踏まえ、汎用性や適用時期等についても考察して参ります。