東京都環境科学研究所

評価結果 H29-1-8

平成29年度外部研究評価委員会 継続研究の中間評価結果

研究テーマ
高濃度光化学オキシダントの低減対策に関する研究
研究期間 平成28年度~平成30年度
研究目的 H27年度までに近隣自治体と共同で行った調査結果やPRTR、モニタリングデータ等を基に、影響の大きいVOC成分の排出源を把握し、オキシダント生成に影響を与えている成分を特定する。また、都内での植物起源VOC排出量を算出し、人為起源VOCの影響と比較することで、植物を含めた都内総VOCの評価と有効な対策のために削減すべき成分、発生源を特定する。
研究内容
  • (1) 光化学オキシダント生成に影響を与えるVOC排出源の絞り込み
  • (2) 植物起源VOC(BVOC)の都内排出量推計に関する調査
     ①都内区部における総葉重量推計
     ②基礎放出量の測定
H28中間評価 A5名、B1名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 光化学オキシダント問題は解決が難しい問題。特にBVOCに着目した研究はぜひとも実施していただきたいテーマ。
  • BVOCとしてトータルな把握ができたら、樹種や各化学成分までブレークダウンできると有用なデータになると思う。
  • 今後、都内23区の植樹本数上位20種に着目したBVOC放出量観測を実施していく予定です。この観測から、樹種ごとの放出量の特性や、放出化学成分のデータを蓄積していきます。
  • 新たな植物の葉の表面積の見積方法を考案,実証しており,今後ツールとして十分に使用できることが期待される。
  • BVOCばかりを強調しているため,人為的VOCの中味の提示が足りないと感じた。
  • ・BVOCと人為起源VOCのオキシダント生成への寄与割合を明らかにすることで、人為起源VOCをどのくらい削減したらオキシダント濃度がどの程度下がるかを解明していきたいと考えています。
    ・自動車排ガスといった、人為起源VOCの削減目標を明確にしていくことで、都市部における効果的なオキシダント削減対策につなげていけるよう、総合的な検討を進めていきます。
    ・並行して実施してる人為起源VOCの研究内容についても、次年度以降詳しく報告していきます。
  • BVOCの都内排出量推計の調査に関して、高分解能衛星画像から植生分布を抽出する手法を応用して、都内13区の植生分布図を作成したことは評価できる。
  • 衛星データを用いたリモートセンシング手法に関しては、関連する大学研究期間(千葉大学等)との共同研究を進めてゆく必要があろう。
  • 衛星画像を用いた植生抽出のための解析技術は、専門の民間企業と共同開発中であり、都内都市部(23区)に現存する樹木の分布や総葉重量(総葉面積)を推定するとともに、BVOCの総放出量の推計を行います。今後は必要に応じて、専門の学術研究機関との連携についても検討していきたいと考えます。
  • 人為起源VOCの多発生地域の検討、および23区の葉重量、葉面積の量と分布を衛星画像から把握するとともに、外部と連携してBVOC放出量を推定する準備を着実に進められ、次年度以降の解析準備が予定通り整っている点が評価できる。
  • 実施計画に従って、都内23区内での総BVOC放出量を把握するため、樹木資源量の推定と、優占街路樹種について季節別の単位BVOC放出量の把握を、着実に進めていきます。
  • PRTR等の届出制度により、人為的VOC排出量は形式的には算定されているが、それでよいのか、何が足りないかを対照できることは重要で貴重な研究である。ただし届出は排出量、本研究は環境測定(濃度)なので、どう対照するのかという問題はある。
    B-VOCについても、実証を伴う研究がこの段階まで進んだか、という手ごたえを感じる。
  • 指摘済みだが、明け方から海風吹き込み段階までの気象パターンによってNMHCの濃度レベルがかなり異なるようで、都内Ox高濃度上位3日を選んだ解析では、都内高濃度につながる気象パターン時のみのNMHCを調べていることになる。別の気象パターンでは湾岸部のNMHCはそれほど高くないが北関東でOx高濃度になる傾向がある。一面的でない認識が必要。
    B-VOCの把握についても、都内の研究が進めば、将来的にその成果が近隣県にも敷衍されるとよいと期待する。
H29事前評価 A3名、B3名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 大学との共同研究で樹木のVOCの実測をはじめるとのことで,地に足のついた検討となっていると思われる。
  • 得られた結果がどのようにオキシダント低減に寄与するのか少し判然としない。
  • BVOCと人為起源VOCのオキシダント生成への寄与割合を明らかにすることで、人為起源VOCをどのくらい削減したらオキシダント濃度がどの程度下がるかを解明していきたいと考えています。
  • 初年度に引き続き、都内都市部(23区)に現存する植物の総葉重量(総葉面積)を推計する研究を遂行する点は評価できる。
  • 学会等、研究成果の発表を積極的に行って欲しい。
  • 次年度以降の大気質シミュレーションの準備として、人為起源VOCと植物起源BVOCそれぞれについて、発生量の推定作業が予定されており、妥当な手段、スケジュールが計画されていると考えられる。
  • 光化学オキシダント生成の原因の一つとして、BVOCの推定に取り組まれていることは理解できるが、一昨年度まで取り組まれていたVOCの広域的な移流の話と、23区に限定したBVOC推定とのつながり方(片や移動し、片や移動しないとする考え方)が理解しづらく感じた。
  • 前年度までの研究で、移流中にオキシダント生成に関与する成分を把握してきましたが、BVOCは大気中の寿命が短く、大気観測からはその影響が評価できないと考えています。そのため、発生量そのものを調査し、オキシダント生成への寄与を検討していく予定です。
  • 植物からのVOC(BVOC)のオキシダントへの寄与が大きいという結果が出ても,都内の植物を減らす政策はとれないと思われます。また,特定の樹木を植栽しないなどといった結論を出さないようにしていただきたい。オキシダントを減らすためには,究極的には自動車排ガスなどからの窒素酸化物の低減を最優先させる必要があることを示していけるように総合的に検討を進めていっていただきたい。
  • ・自動車排ガスといった、人為起源VOCの削減目標を明確にしていくことで、都市部における効果的なオキシダント削減対策につなげていけるよう、総合的な検討を進めていきます。
    ・並行して実施してる人為起源VOCの研究内容についても、次年度以降詳しく報告していきます。
  • 大変理解しやすいスライド資料になっている。
  • 多くの樹種に対して、季節変動も考慮したボリュームゾーンを上手く把握、推定されることを期待する。