東京都環境科学研究所

評価結果 H29-1-9

平成29年度外部研究評価委員会 継続研究の中間評価結果

研究テーマ
東京湾の水質改善に関する総合的研究
研究期間 平成28年度~平成30年度
研究目的 長期的・広域的な水質改善に資するため、赤潮や貧酸素水塊メカニズムの解明を進めるとともに、これまで得られた浅場・干潟の浄化機能の知見と合わせ、効果的な対策について研究する。
研究内容
  • (1) 貧酸素水塊の発生メカニズムの解析と対策に関する研究
    ①高頻度・高密度の水質現場調査
    ②底層水の貧酸素化と赤潮発生との関係解析
    ③底層水の貧酸素化と底質酸素消費との関係解析
    ④貧酸素水塊発生要因の推定
  • (2) 赤潮発生抑制効果を期待できる植栽樹種の研究
    ①赤潮形成プランクトンの特定
    ②各種プランクトンの増殖特性の検討
    ③各種プランクトンの増殖抑制物質の探索
H28中間評価 A4名、B2名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 長年に渡る系統的、継続的な取り組みには、高く評価される。今後も期待する。
  • 精力的にデータを収取していることに敬意を表します。
  • 各ステーションの底質鉛直分布のデータを、マップに落とし河川等の流入水質の影響が把握できないか。
  • 各ステーションでの測定・分析を継続し、河川及び下水処理水の水質が赤潮の発生と底層貧酸素化に与える影響を把握していきます。
  • これまでになかった鉛直方向(水深別)のデータが捕えられており,貧酸素・赤潮発生海域の状態が明確になっている。
  • 貧酸素水塊の測定結果を青潮発生メカニズムにも適用可能か?水深が深いほど貧酸素水塊が増えれば嫌気性菌(硫酸還元菌)の活動も活発となり青潮発生の潜在的リスクを向上させることにならないか?
  • 2017年度は青潮発生の主要因である海水の流向・流速を測定しています。今後の調査で青潮の発生があれば、青潮発生メカニズムにも測定結果を適用することができます。
  • 東京湾の水質改善は、都民の憩いの場の環境改善のみならず、魚介類の生息環境改善という観点からも重要な研究として評価できる。
  • 本調査は、明記されていないが、過去数十年間の水質・水温等の観測データが蓄積されていると思われるが、それらを用いた長期的な水質環境変化に関する研究成果も合わせて紹介して欲しかった。
  • 研究成果について、2018年3月の水環境学会年会で発表する予定です。過去数十年間の水質変化についても、同時に発表する予定です。
  • 研究の目的が明確であり、海域水質の鉛直分布を広域に高頻度、高密度で観測した上で、貧酸素、赤潮の要因分析を進められ、また研究成果の外部発表を積極的に進められていることなどが高く評価できる。
  • 赤潮の発生と貧酸素水塊の状況が把握されたことは成果の第一歩であろう。引き続き動態の具体的把握に向けて、計画されている調査に期待したい。
  • この分野に詳しくないが、赤潮は何十年来の問題であり、今研究されていることがこれまで行われて来なかったのが不思議に思える。過去に調査例が無いのか。
    調査例はあるが断片的だったり不備があったのか、あるいは過去の実態は過去のもので現代には通用しないのか。
  • 赤潮、貧酸素水塊等の発生要因については多くの知見がありますが、これらの現象を媒介している物質の移動量については知見が不足しています。水質悪化のメカニズムを解明するために、海域の酸素や窒素・りん等の物質の移動について調査研究を進めます。
H29事前評価 A5名、B1名
評価コメント及び対応
(同様の評価及び対応は、まとめて記載)
  • 水質だけでなく底質(底泥)の調査も並行して計画しており,より総合的な調査になることが期待される。
  • 他のテーマ(有害化学物質のモニタリング研究など)と協力して,東京湾の底泥に生息する生物(アサリ,カサゴ,イシガレイ,マコガレイ,イイダコ,マダコなどのメガベントス?,etc.)へのPOPs物質や水銀の濃縮についても検討していただきたい。
  • 2017年度は、底質調査・試験を重点的に行うとする計画は妥当で、評価できる。
  • 新規の調査項目と同時に、従来からの継続した調査・測定を行って、長年のデータを蓄積していくことが望まれる。
  • 前年度の調査継続に加えて、貧酸素水塊の一因と考えられる底質調査を実施することで、貧酸素水塊と赤潮の発生メカニズムを検討するプロセスは適切なものと考えられる。
  • 国環研等との共同研究の意義が明確になるように補足説明してほしい。
  • 国立環境研究所及び他府県の研究所とは、海域の底層貧酸素化や富栄養化に関して情報共有、意見交換を行っています。
  • 2016年の調査を活かしてさらに的を得た調査の積み上げと解析の進展を期待する。