東京都環境科学研究所

評価結果 H30-1-1

平成30年度外部研究評価委員会 終了研究の事後評価結果

研究テーマ
最終処分プロセスに関する技術開発
研究期間 平成27年度~平成29年度
研究目的 環境負荷低減と費用削減のため、新たな処理技術(アナモックス反応)を用いた浸出水処理の実証試験及び技術開発を行い、新技術の適用可能性について調査する。
研究内容
  • (1) 単一槽内に好気部と嫌気部をつくることによるアナモックス反応による硝化・脱窒処理実験を行い、新たな浸出水処理技術を開発していく。
  • (2) オンサイト施設での適用可能性が十分に実証された場合には、民間企業との連携による実用化も検討していく。
事後評価 B6名
評価コメント及び対応
  • 温度及びBODが大きな影響要因であることなど、基礎的なデータを収集できたことは評価したい。
  • テーブル実験およびフィールド実験において、アモナックス反応を適用した脱窒素処理手法に関する基礎的知見が得られたことは評価されるが、実用化の可能性については明確な結論が得られていないような印象を受ける。実験結果を見る限り、本手法の適用可能性が否定されたものとは思われないので、本研究で得られた問題点や課題を整理した上で、今後進めていくべき研究計画を構築されることを期待する。
  • 浸出水の脱窒処理でアナモックス反応を利用するためのプロセスに工夫を施し、適用可能性のあることを明らかにしたことは、アナモックス反応を将来的に応用する上での参考データになるものと考える。
  • テーブル実験とフィールド実験の両面から、アナモックス反応による脱窒素処理の適用可能性を検討し、一定の成果が得られたことは評価できる。
    フィールド実験では、冬季の温度低下を防ぐ対策が必要であることが確認されたので、今後は実際の中防排水処理場と同等の実験施設での分析検討を推進すべきであろう。
  • アナモックス反応は脱窒素反応に使用するメタノールが不要となることから、BODが低くアンモニア濃度が高い浸出水処理に適していることは理論上推測されていたが、最終処分場浸出水処理にアナモックス反応が適用可能であることを、実現水を用いた連続実験で示したことは評価できる。通常の硝化・脱窒反応に比べて、硝化反応に用いる曝気動力の削減、すなわちCO2排出量の削減効果も期待できる。
  • 種々の実験的検討を行ったこと自体は意義があると考えられる。性状の一定しない浸出水の処理に、力づくではないうまい技術の適用可能性を試すという発想は良かった。
  • これまでの実験結果を見るかぎり、本法がさらに研究を続けること実際に使用可能になるかかどうかの判断ができない。
    また、研究者の記述(ページ7のまとめ)を読んでも、上記の点がはっきりしていない。
    この方法を実際に適用するときには、さらにどのような点を研究し解決すべきかの考察がない。失礼な表現をすればやりっぱなしという印象である。
    研究なので常にうまくいくとは限らないが、ほかのテーマも含めて、今後の研究にあたっては上記の点を踏まえた実験計画が必要である。
  • 本研究で検討した手法は、ある程度の性能は発揮できる結果が得られたものの、実際に使用するにはなお微生物の増殖管理等の課題を克服する必要があることがわかりました。本研究は一旦終了し、研究成果を学会等で広く公表することにより、今後のこの分野での技術の発展に貢献したいと考えています。
  • 10号ポンプ井戸に関するフィールド実験で、硝化槽でNO2-Nへの硝化率を50%に維持することが困難である理由が理解できなかった。
  • 硝化槽でアンモニアを硝化すると、硝化菌数が増加するので硝化率は上がっていきます。硝化を抑制するために溶存酸素を低くしましたが、処理が不安定となり、硝化率50%を維持するのが困難でした。
  • 冬季の保温制御が困難で、解決策が見い出せなかったことは、実用化に向けた大きな障害になると思われる。
  • アナモックス反応では水温の低下が大きな問題なりますが、現在埋立処分場で稼動している排水処理装置でも同様に冬季に水温を保つことが必要で、冬季には埋立ごみから出た浸出水を調整池を通さず、直接処理装置に送水することによって保温しています。このため、現存の施設でアナモックスによる脱窒素処理を行う際には、保温対策が可能と考えられます。
  • フィールド実験で当初(H27年度)用いていたポンプ井戸(10号)が継続使用できなくなったのはやむを得ないが、新たなポンプ井戸の設置場所選定にあたっては、できる限り外的条件(水位変動など)が変わらないように留意すべきであったと思われる。
  • ポンプ井戸(10号)からの浸出水の水質は排水処理場に入る水質と似ていたため、実用化の研究には適していました。新たなポンプ井戸の選定場所については、種々の制約から水質の異なる地点で実験せざるを得ませんでした。
  • フィールド実験は浄化槽を改造した装置を用いているが、アナモックス反応で重要な亜硝酸化の制御に適した装置とは言い難い。また、平成28年度、29年度の実験原水はBODが高く、アナモックス反応にとっては難しい水質である。将来的な実施設建設地を想定してのフィールド選定であったのかという当日の質疑では、やむを得ずの選択であったとの回答であったが、2年間の実験期間を考えると、フィールドとして適した地点を確認した後に実験を開始するのが良かったのではないかと思われる。
  • 硝化槽の後に沈殿槽を設けた処理装置が望ましかったのですが、比較的大きな槽を安く入手するのに浄化槽は適していたと考えました。採水場所の移設に当たっては種々の制約から適切な場所を選定することができませんでした。
  • 非専門家の事後の印象ではあるが、1槽式の検討の着手が中途半端だったように見える。2槽式での技術が未確立であったとすれば、1槽式で一挙にうまくいく筈もないという気がするが、取り組んだ経過を自己評価して今後に活かされたい。
  • 海外では1槽式の大きな規模の施設が作られていますが、その運転管理方法があまり知られていません。小型の担体を使う円筒型処理装置では硝化と脱窒素が比較的うまくいきましたが、大型化したときの処理効率が問題となると考えられます。