東京都環境科学研究所

評価結果 H30-1-2

平成30年度外部研究評価委員会 終了研究の事後評価結果

研究テーマ
都市ごみ処理プロセス中の資源管理・都市ごみ中の有害物質の管理手法に関する研究
研究期間 平成27年度~平成29年度
研究目的 都市ごみの焼却灰中の金属資源や不燃ごみ中の金属資源について、その資源性等を評価することにより金属資源の循環利用が可能なシステムを示すと同時に、金属を可能な限り分離した後の焼却灰や不燃残さ等について、セメント化・溶融スラグ等のベストミックスによる埋立処分量の最小化を視野に入れた調査研究を行う。また、都市ごみ中の電池類や有害物質含有ごみの分別区分のあり方や、焼却排ガスや処理残さなど処理プロセスに関する測定技術や制御技術に関する調査研究を行う。
研究内容
  • (1) 都市ごみ処理プロセスから発生する金属や焼却灰について、その資源性を評価し、循環利用が可能なシステムを示す。
  • (2) 有害物質を含む焼却排ガスや処理残さなどの処理プロセスに関する測定技術や制御技術等に関する調査研究を行う。
事後評価 A2名、B4名
評価コメント及び対応
  • ごみ焼却灰中の塩素の除去特性、金属の分離特性、活性炭性能の定量評価が行われ、今後の資源化、排出管理の基盤データが得られている。また、研究成果の積極的な外部発表に心がけられ、学術的にも評価できる。
  • 金属水銀、塩化第二水銀における活性炭吸着能比較実験を行い、水銀用活性炭が両者のいずれにおいても一般活性炭よりはるかに有効であることを示したのは評価できる点で、今後発展の可能性があると考えられる。
  • 資源管理に関しては、焼却主灰を分級することで粒子径毎のCl含有量と金属含有量を明らかにした。特に、銅については特定の粒子径に極めて高い濃度で含まれていることは興味深い。また、脱塩については、水洗浄のみではセメント受入れ基準をクリアできないことがわかった。
    都市ごみ焼却排ガス中のガス状水銀について、実プロセスを想定した温度領域で吸着・反応実験を行い、各種活性炭の処理特性を明らかにしたことは評価できる。
  • 終了年度として、実験とか分析とかでこれといった飛躍的な結果が出ているわけではないが、遠くない未来に向けての突破口を切り開くための分析・検討が精力的に行われてきたことが確認できる。
  • 都市ごみ処理プロセスから発生する金属資源について、有用金属の回収の可能性、セメント再資源化の阻害要因の除去について基礎的データを出せたことは評価する。
  • 金属資源回収、セメント再資源化については、次期研究で更に発展させていきたいと考えております。
  • 焼却灰中の塩類含有量と脱塩処理の効果に及ぼす灰の粒子径の影響について基礎的な計測結果が得られており、今後の焼却灰利用技術の研究にとって有用な知見が得られているものと評価される。学会誌への論文投稿、学会発表にも積極的であり、成果の公表という観点からも評価される。
  • 本研究成果を活用し、次期研究につなげていきたいと考えております。
  • 都内の都市ごみ焼却工場での排ガス処理状況をまず明らかにし、そのうえで水銀対策が必要であることを明記すべきと思う。一般活性炭に比べ水銀用活性炭のほうが効果があるのは当然である。これらの研究結果を参考に、今後都市ごみ焼却工場で新規に排ガス中の水銀を除去する場合、コスト、耐久性などを考えた時、どのような活性炭を使用すべきかのヒントが出て来ない。
  • 区部の清掃工場では、突発的な水銀濃度上昇により焼却炉を緊急停止せざるを得ない状況となることがあり、除去性能が少しでも高く、即効性のある活性炭を準備しておくことが求められています。しかしながら、コストや耐久性は実用化の際には重要な観点ですので、十分に留意しながら本研究を進めていきます。
  • 焼却灰の起源となるごみの特徴と塩類および金属の含有量の関連が明らかになるとより汎用性のある知見が得られるものと思われる。
  • 焼却灰の起源となるごみの特徴と塩類および金属の含有量の関連については、外部資金研究や、自主研究とも関連性がありこれらの成果も活用していきたいと考えております。
  • 資源管理については、脱塩と金属回収(再利用)を並行して実験しているが、セメント原料化を考えると塩類濃度、金属濃度いずれも受け入れ基準以下にしなければならないのではないか。両方の基準を満足できる処理方法につながるのかどうか、不明である。また、<0。5mmの粒子は金属含有量は比較的少ないが、主灰全体の中の総量としてはどのくらいであるのか。総量が多ければ、セメント原料化の対象を<0。5mmに絞って脱塩実験をしてもよいのではないか。
  • セメント原料化における受け入れ基準の塩類濃度、金属濃度は絶対的なものではありません。ただし、セメント原料化による最終処分量の削減を目指す場合には、これらの濃度を下げる必要があるため、その手段として、次期研究では物理選別や脱塩実験を行う予定です。本研究結果では主灰の<0.5mm以下の重量割合は30~40%程度です。ご意見を頂いたとおり、脱塩実験は<0.5mmに絞って実施することも検討したいと考えております。