東京都環境科学研究所

評価結果 H30-1-5

平成30年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
有害化学物質の分析法・環境実態の解明及びリスク対策に関する研究
研究期間 平成29年度~平成31年度
研究目的 都民や都内に生息する生物への有害な影響を及ぼす可能性を視点に、優先度の高い化学物質を明らかにして、その排出源等を調査するとともに都内におけるリスクの解明、ひいてはその削減に関する手法について提言を進める。
研究内容 (1) 都内環境実態の継続監視(環境省受託事業の化学物質環境実態調査含む)
都内定点におけるPRTR法や化審法対象物質、POPs等(ダイオキシン含む)の環境残留状況調査
(2) 都内要調査物質の環境実態解明及びリスク評価
都内において優先的に調査対象とすべき化学物質に対して、実態調査を継続、データを解析しリスクの評価を行う。さらに排出源周辺におけるリスクの極小化のための検討を行う。
H29中間評価 A2名、B3名、C1名
H29評価コメント及び対応
  • 長年にわたって都内の有害化学物質による汚染状況を明らかにしてきた。
    分析濃度はpptレベルであり、かなり難しい分析であることを評価したい。
    また、分析結果をリスクとの関連で考察しており、この点も評価する。
  • 都内の環境実態を継続的に監視したデータは非常に貴重であり、またリスク評価を実施していることは評価される。得られた成果を論文および学会発表で積極的に公表されており、学術的にも価値のある成果が得られていると思われる。今後の継続的な調査を期待する。
  • 大気及び河川水への有害化学物質の汚染状況を調査し、いずれもリスクが低いことを明らかにするとともに、積極的に外部発表を行っている。
  • 大気、水、底質、生物の試料採取と分析から、有害化学物質の環境動態を解明しリスク対策を検討することは意義があり、評価できる。
  • 都内環境実態については、特に地下水での残留性が高いとされているPFOSを継続的に調査しているが、狛江市①のみ経年的に濃度が低下しているのは興味深い。地下水流速が高いのか、地質的な違いがあるのか解析されることを期待する。
    農薬濃度については水生生物への影響が最も問題となるが、大気に関しては都民への直接影響が懸念されるため、実態調査の結果が今後の行政施策に反映されることを期待する。
  • 注意が必要な有害物質の継続調査、都民が注目すべき諸物質を的確に選定しての調査が多媒体にわたって行われていて、自治体の役割がたいへん望ましい形で発揮されている。
  • 都内地下水の有機フッ素化合物濃度が米国EPAの勧告値に比べて高い値が出ている地域があるが、この点についてどのような見解を持たれているのか伺いたい。
  • これまで調査してきた地点は、いずれも飲用井戸ではないうえに、国内では規制値は設定されていない状況ですが、将来規制される可能性を想定しモニタリングは継続していきたいと考えています。
  • 今回の調査対象物質は、結果としていずれもリスクが低かった訳だが、それが調査先に依存しているものなのか、リスク化学物質のスクリーニングが十分でなかったのかが明確ではない。
  • リスク化学物質のスクリーニングは、事業場からの届出排出量または推計排出量とその毒性値から計算したものなので、この手法に大きな問題はないと考えます。このため今回の調査先に関しては、実際に選定した化学物質の濃度が高いリスクを示すほどのレベルではなかったと考えます。
  • 本研究は、環境局からの委託研究で、化学物質環境実態調査については環境省受託事業(国立環境研究所)による共同研究となっているが、この両機関と都環研が独自に行う研究の関係が不明瞭なので、具体的に役割分担等を明記してほしい。
  • 報告の際に、環境局からの受託研究と環境省からの受託事業とが明確に分かるように工夫します。
  • 小笠原父島の大気調査については、何らかの変化があるのか。
  • 小笠原の調査はいわゆるバックグラウンド地点として継続しているものであり、過去から都市域として低い濃度レベルで変化なく推移しています。
H30事前評価 A2名、B3名、C1名
H30評価コメント及び対応
  • これまで同様に、地道な分析でデータを集積してほしい。特に大切なことは分析データの経時的な変化などで。
  • 都内環境実態を継続的に実施する研究計画は適切であり、これまでと同様に実施されることが期待される。また、大気媒体および水媒体についてのリスク評価を実施し、その成果を行政施策へ活用する計画も意義のあるものと思われる。
  • 前年度同様にリスク物質と調査先を絞り込んだ計画が立てられている。
  • 都内環境実態の継続監視の観点から、本研究は意義がある。
  • 継続的な実態調査は評価できる。また、高リスク化学物質と排出源の特定は、対策につながることが期待される。
  • 継続監視といったことが当たり前のように行われているが、経費や人員を確保して大きな労をかけて調査と評価が実施されていることに敬意を表したい。
  • 前年度の結果から、リスク化学物質のスクリーニング、調査先の選定では、前年度と少し異なった視点からの取り組みも必要ではないかと思う。
  • 調査対象物質の選定に当たっては、事業場からの排出量にもとづく情報だけでなく、実際に測定してみたデータや文献情報も活用していきたいと考えます。