東京都環境科学研究所

高濃度光化学オキシダントの低減対策に関する研究(2016-2018年度)

 

平成31年度外部研究評価委員会 終了研究の事後評価結果

研究テーマ
高濃度光化学オキシダントの低減対策に関する研究
研究期間 2016年度~2018年度
研究目的 H27年度までに近隣自治体と共同で行った調査結果やPRTR、モニタリングデータ等を基に、影響の大きいVOC成分の排出源を把握し、オキシダント生成に影響を与えている成分を特定する。また、都内での植物起源VOC排出量を算出し、人為起源VOCの影響と比較することで、植物を含めた都内総VOCの評価と有効な対策のために削減すべき成分、発生源を特定する。
研究内容
  • (1)光化学オキシダント生成に影響を与えるVOC排出源の絞り込み
  • (2)植物起源VOC(BVOC)の都内排出量推計に関する調査
  •  ①都内区部における総葉重量推計
  •  ②基礎放出量の測定
2018事後評価 A 5名、B 1名
評価コメント及び対応
  • 工業地域における面的調査と東京湾岸部における広域調査から、VOC排出源の絞り込みにある程度成功したことは評価できる。
 
  • 時間別調査結果で、トルエン濃度が高くなった風向から、東京湾と陸側のどちらからでも高くなると結論づけているが、採取地点の局地的風向だけでなく、より広域の気象条件(気圧場、風速など)も考慮して、原因の解明をすべきである。
  • 横浜市や千葉市との共同調査結果や、より広域の気象データを考慮し、引き続き高濃度原因の解析を行います。
 
  • 区部のBVOCの評価に向けて積み上げられた一連の研究は画期的な成果と考えられる。一方、面的調査・広域調査に関しては「測ってみた」ことから先につながる戦略がいまひとつ明確でないように思われる。
  • VOC排出源を特定するためのデータを蓄積できたことは研究成果として評価できる。VOCの排出源を明確にすることは光化学オキシダント生成の予測手法確立に重要であるとあると思われるので、計測結果と大気シミュレーションを組み合わせて詳細な解析を行うことで本研究テーマがさらに発展することが期待される。
  • 個人の理解では光化学オキシダントの発生抑制に何が有効か、まだ結論できない。この研究で発生抑制に何が律速になっているかが分かれば、その後の行政の進め方にも重要な知見になると思う。期待している。
  • VOC調査では、工業地域の排出量の季節変動や時間変動を明らかにし、発生源の推定につながるデータが積み上げられている。BVOC調査では、温度や光量と放出量の関係を明らかにして総放出量の推計に成功し、また研究成果の積極的な外部発表が行われていることが高く評価できる。
  • 工業地域における光化学オキシダント調査結果によると、検出されたVOCのうちPRTR届出対象外物質が5割以上を占めることが明らかになった。また、10地点での風向きとVOC濃度の経時変化から、排出源の位置を推定できる可能性も示された。
    植物起源VOC(BVOC)については、都市の街路樹に多い樹種のうち9種類について、任意の温度・光量におけるVOC放出量が推定できるようになったことは評価できる。
  • PRTR届出対象外物質でオキシダント生成能割合の上位を占めるエチレン、プロピレン、プロパンは地域外に発生源があることが示唆されたが、今後の継続的な調査を実施するうえで、近隣県との連携が必要と思われる。