東京都環境科学研究所

微小粒子状物質の濃度低減等に関する研究(2017-2019年度)

令和2年度外部研究評価委員会 終了研究の事後評価結果

研究テーマ
微小粒子状物質の濃度低減等に関する研究
研究期間 2017年度~2019年度
研究目的 PM2.5の短期基準を超過する原因を明らかにするため、硝酸塩の生成条件を把握するとともに、人為起源微小粒子の評価指標であるPM1.0の環境実態を把握し、低減対策を示すことを目的とする。
また、常時監視測定結果の解析や有機成分分析の充実を図り、短期基準のみならず長期基準を達成する方策の検討に必要なデータを提供する。
ナノ粒子について、都内大気中環境濃度の実態を把握し、経年変化等について評価する。
研究内容
  • (1)PM2.5短期基準超過要因となる成分組成に関する研究
  •  ①硝酸塩の生成条件
  •  ①有機成分の発生源寄与
  •  ③PM1.0の実態把握
  • (1)常時監視測定結果の解析等
  •  ①質量濃度、成分組成のデータ解析
  •  ②関東SPM合同調査における広域的検討
  • (3)大気中ナノ粒子に関する研究
2019事後評価 A 6名
評価コメント及び対応
  • PM2.5の増加原因となる硝酸アンモニウムの生成要因、炭素成分の分析による有機成分の季節別の排出起源、PM1.0の観測によるPM2.5の発生起源、ナノメートルオーダーの微小粒子を起源とするPM2.5等の粒子成長に関わる要因分析等が調査分析され、粒子状物質の生成メカニズムが明らかにされつつあるとともに、外部発表も積極的に進められている点は高く評価できる。
  • 秋冬季におけるPM2.5の主要因とされる硝酸アンモニウムについて、平衡定数や潮解性に関連する数値を詳細に検討し、高PM2.5出現の条件を明らかにした。また、炭素成分について放射性炭素同位体を用いて季節別に発生源を詳細に調べた結果は、対策を考えるうえで価値が高いものと評価できる。関東甲信静地域の17自治体と合同で広域的な発生源寄与調査結果が得られたことも高く評価できる。
  • 新粒子生成イベントの頻度は夏季と冬季に高い二山型の季節変動があり、両者の生成機構が異なることが明らかになった。
  • 国内、海外の学会誌で複数の論文が掲載されていることは高く評価される。
  • 都市部においてもSO4が核となる新粒子生成がその後の硝酸アンモニウムなどの粒子成長を促進しPM2.5濃度増大につながる知見は、今後の対策にとって重要だと思います。またPM2.5などの組成分析から植物起源の炭素成分や人為起源のSOAの割合が多いという知見も重要です。多くの重要な科学的知見が得られており高く評価する。
  • 2次粒子生成メカニズムを明らかにした点や、広域調査において発生源寄与を推定した点は高く評価できる。今後の予測や対策に繋がるものとして期待できる。
  • PM2.5とガス状前駆物質の濃度や気象条件を合わせた連続測定結果の解析から二次粒子である硝酸アンモニウムの生成メカニズムが明らかとなり、学術的にも高く評価できる。また、新粒子生成イベントの解析から、PM2.5の成長過程に新たな知見が得られている。これら以外にもPM2.5の発生に係る研究成果が得られており、学会誌及び学会等において積極的に公表していることからも高く評価できる。
  • 詳細な計測および解析から学術的にも興味ある知見が得られていることは高く評価される。成果の公表も積極的に行われている。
  • 都市部における植物燃焼とは、どのような状況が想定されるのか。
  • 気象条件を含めた解析から関東北部の農業廃棄物焼却の影響を受けていることが示唆されています。