東京都環境科学研究所

都有施設のスマートエネルギー化の推進に向けた調査研究(2019-2021年度)

令和2年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価結果

研究テーマ
都有施設のスマートエネルギー化の推進に向けた調査研究
研究期間 2019~2021年
研究目的 都有施設のエネルギー使用データをもとにした詳細分析を行うことで、省エネ対策の推進・阻害要因を明らかにし、現行の「スマートエネルギー都庁行動計画」の適切な進捗管理および次期計画策定に向けた情報を提供する。
研究内容
  • (1)都有施設のうち知事部局等が管轄する事業所のエネルギー使用実態のデータベース化
  • (2)データベースを用いた分析
  •  (エネルギー消費傾向、省エネ推進・阻害要因の推定、省エネポテンシャルの推計等)
  • (3)効果的な省エネ対策を実施している事業所の個別調査等
  • (4)都内中小規模事業所との比較
2019中間評価 A 2名、B 3名、C 1名
評価コメント及び対応
  • 用途別に分類され、推定された都有施設の省エネポテンシャルは、現時点の実態情報として有用性が高いと考えられる。
  • 省エネアンケートの結果を解析し、阻害要因(省エネバリア)を数値化したことは、具体的な対策を講じるために資するデータとして評価できる。
  • データベースの構築は重要だと思う。「運用改善は情報不足、設備導入は資金不足が大きな省エネバリア」という通説を定量的に示したことは評価できる。
  • 貴重なデータを収集し、データベース化を進めている点は評価できる。一方で、省エネポテンシャルの算出基準を都有施設の中央値に設定する根拠が十分とは言えない。抽出されている省エネ対策が横並びで評価されているが、効果の大きさなどが異なる点をもう少し考慮すべきではないかと考える。
  • 知事部局等が管轄する約3300施設のエネルギー使用実態をデータベース化し、解析基盤を構築したこと、また学会発表を積極的に行っている点は評価できる。
  • アンケートに基づき、省エネ推進・阻害要因の分析を着実に実施していることは評価される。さらなる解析により省エネ推進の施策に有効な知見が得られるものと期待される。
  • スマートエネルギー都庁行動計画を策定した当の環境局や、ボリュームゾーンの教育庁や警視庁の各施設が回答しない本省エネアンケートの結果が、都有施設の実態をどれだけ正確に代表できているのか、今後有効に活用される見込みはあるのかが疑問である。都職員の省エネ意識の低さを示すだけの調査にしないための改善・工夫が必要ではないだろうか。
  • アンケートの有効回答率が23.8%とのことであるが、都の施設への様々なアンケートの回収率と比べて、高いのか、低いのかで、省エネへの関心度が測れるのではないか。
  • 実施した省エネアンケートに回答した部局の割合に偏りがあるが、今後どのように解析を進めていく予定なのか。
  • エネルギー消費量が大きく、部局内対象施設も多い、警視庁、教育庁からのアンケート回答がゼロであることが懸念される。回答率向上の方策が望まれる。
  • アンケート有効回答率の低さは大きな課題であると認識しています。今回のアンケートで回答が得られなかった部署のうち、教育庁が所管する都立高校と特別支援学校については、今年度中に改めてアンケートを実施する予定です。警視庁や環境局については、施設管理担当者へのヒアリング調査を行い、これによりアンケートを補完することを考えています。
  • 「スマートエネルギー」とはエネルギーの有効活用をめざすもの、という印象があり、省エネルギーとは少し異なるような気がするが。省エネバリアや阻害要因の分析が主だったが、導入事例による推進の要因についても分析すると良いのではないかと思われる。
  • 本研究は東京都が策定する「スマートエネルギー都庁行動計画」(2015~2019年)の推進、ならびに次期行動計画(2020~2024年)の策定に資する情報を提供するという目的の下、環境局からスマートエネルギーのなかの特に省エネに着目した調査研究を進めてほしいとの要望を受けてスタートしました。もちろん、スマートエネルギー化のためには「省エネ」だけでなく、「創エネ」「蓄エネ」の観点が重要ですので、この点については今後の課題とします。また、推進要因の解明も重要な課題と認識していますので、個別調査を進めていきたいと考えています。
2020事前評価 A 1名、B 4名、C 1名
評価コメント及び対応
  • 省エネが進んでいる事業所への個別調査は、実態調査の裏付けとして重要なことだと考えられる。
  • 都有施設の中で、省エネが進んでいる事業所等の個別調査を実施し、省エネへ取り組みの動機付けを明らかにすることは意義があると思われる。
  • データベースの構築は重要だと思う。
  • データが充実しているため、様々な視点・方法で分析を進めることは重要であると考える。
  • 具体的な研究計画が示されており、スケジュールも妥当であると思われる。省エネが進んでいる事業所等の個別調査の結果を生かしたより詳細なデータ解析の実施に期待する。
  • これまでの研究成果に基づき定説的な研究計画が設定されていると思われる。省エネポテンシャルのより高度な推計手法の構築が期待される。
  • 建物付帯設備は1年で大きく変わるものではなく、2018年度のエネルギー使用実態の追加調査にどれだけの意味があるのか、また事業所への不十分なアンケート結果の詳細解析にどれだけの意味があるのか、再検討を要すると思われる。さらに、コスト意識の全く違う民間の中小規模事業所との比較には現状では無理があり、まずは都有施設だけに的を絞って、個別調査でより踏み込んだ分析を行うことも考え得ると思う。
  • 建物付帯設備が変わらない場合でも、天候の変化や運用改善への取組によってエネルギー使用量は大きく変わる場合がありますので、経年変化を追うことで省エネに対する各要因の寄与度を明らかにしたいと考えています。アンケート結果については、教育庁関連施設への追加的なアンケート調査及び個別ヒアリングによって補完したうえで、計量分析を進めます。民間施設との比較については、ご指摘のとおりコスト意識が大きく影響していますが、本研究はコスト意識や施設稼働時間をはじめとする民間と公共の差異が省エネに与える影響を分析対象にしていますので、引き続き比較をしつつ進めていきたいと考えています。
  • 民間の中小規模の事業所についての2019年度結果表3(2016年度データ)では、テナントよりも自己所有オフィスでエネルギー消費原単位が低く、省エネの動機が経済性であることがうかがえる。都有施設は様々な用途の施設があり、省エネが進んでいる事業所等の個別調査の結果を他の施設・事業所に展開するのは、かなり難しいことが想定される。
  • 省エネが進んでいる事業所の取組をそのまま他施設・事業所に展開するのは困難な場合もあると考えますので、省エネ行動を促進・阻害する要因の抽出に重点を置いた事例調査を進めていきます。
  • 省エネ対策の推進・阻害要因の解明について、構築したデータベースの利活用の方法が良くわからなかった。データベースがすでに整備されているので、可能であれば2020年度4-5月期のテレワーク時にどの程度削減できたのかを調査して欲しい。その結果をもとに導入可能な制度設計まで考察できるとよいと思う。
  • データベースには各施設・事業所が取り組んでいる省エネ対策も含まれていますので、エネルギー消費量の変化と照らしあわせながら、推進・阻害要因の解明を進めます。また、テレワークの推進によるエネルギー削減効果の分析は非常に重要だと考えています。2020年度のエネルギーデータが入手できるのは来年度になりますが、入手出来次第検討したいと考えます。
  • 都有施設のエネルギー消費の状況は、他の一般的な施設と比べるとどの程度であるか、を把握しておくと良い様に思われる。省エネポテンシャルの基準を建物用途や規模などに分類して設定し、費用対効果などで対策の優先度を決められる様な形にできると良い。
  • 知事部局等の施設が多様であり、事業内容も様々である中で、有効な区分方法等を検討して解析を進めていただきたい。