東京都環境科学研究所

微小粒子状物質の濃度低減等に関する研究(2020-2022年度)

令和4年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
微小粒子状物質の濃度低減等に関する研究 【継続】
研究期間 2020年度~2022年度
研究目的 季節別高濃度発生要因の解明(ガス状前駆物質、気象条件)
新粒子生成に関する考察(硝酸ガスによる核形成の可能性)
研究内容
  • (1)PM2.5主要成分、ガス状前駆物質の連続観測
  • (2)ガス状前駆物質(アンモニア等)の排出実態(捕集方法等の検討)
  • (3)大気エアロゾルの粒径別測定
中間評価 A 2名、B 3名
評価コメント及び対応
  • 微小粒子状物質の通年計測を実施し、人為発生源の一つとして自動車排ガスからのアンモニア排出を特定するとともに、PM1.0やPM10の発生データの積み上げと分析評価を行い、積極的な成果の発信に努められています。
  • ナノ粒子の粒径分布測定については、まだ必要性が良く見えておらず、関連研究の調査も実施しつつ、より明確な意味づけを図って欲しい。
  • 継続的なデータ収集・蓄積や新たな分析法・測定法の確立は、行政の施策立案にとって必須であり、意義がある。
    PM2.5の高濃度化に寄与するアンモニアの人為的な発生源である自動車排出ガスについて、アンモニア態窒素の安定同位体比を調べたところ、ガソリン車とガソリンHV車では大きく異なることがわかった。アンモニア態窒素の安定同位体比を測定することで、発生源の寄与解析が可能になる可能性が示されたことは興味深い。
  • 【問】大気中ナノ粒子の粒子成長時間が短い場合(夏季)は、飛来粒子が多く、長い場合(冬季・春季)はその場で成長・形成される粒子が多いということか。
  • 【答え】夏季の粒子成長時間が短いのは、気温が高いために一度粒子を形成した成分が再びガスとして揮散することが要因であると考えられます。一方、冬や春に成長時間が長くなるのは、夏と比べて大気の上下方向の混合が弱く安定していることに加え、気温が低いため粒子を形成する成分の再揮散が押さえられるためだと考えられます。
  • Kp値を用いた硝酸塩の生成条件や、自動車排ガスからのNH3排出を明らかにしたことを評価します。
  • 研究計画に沿って着実に成果が得られており、また、論文、学会発表により成果公表も積極的に実施されている。
  • 例外的な事例かもしれないが、大型車のアンモニアスリップについては対策を検討すべきではないかと思われる。また、10nm以下の粒子計測の精度に関する考察があれば公表していただきたい。
  • 季節別の濃度変化が明らかになった点は良いが、その要因分析がされていない印象。
  • 【問】冬や春で粒子成長時間が長くなるのは何故か、硝酸アンモニウムが周期的の濃度上昇するのは何故か。
  • 【答え】冬や春に成長時間が長くなるのは、夏と比べて大気の上下方向の混合が弱く安定していることに加え、気温が低いため粒子を形成する成分の再揮散が押さえられるためだと考えられます。硝酸アンモニウムの周期的な濃度変化についても気象要因の影響が大きく、晴天弱風下で放射冷却により接地逆転層が形成されると濃度が上昇する傾向があります。
事前評価 A 1名、B 4名
評価コメント及び対応
  • これまでに蓄積したデータと知見を活かした三テーマが、それぞれに目的をもって深められる取り組になっており、成果が期待されます。
  • 三テーマが並行して同じような取り組みスケジュールで進め続けられています。もう少し、メリハリをつけた取り組み方をチーム内で行えないものかと感じます。
  • PM2.5の高濃度化をもたらす要因を明らかにし、濃度低減に有効な対策を示すことは意義がある。
  • アンモニア(NH3)濃度no排出実態については、自動車以外にもいろいろな排出源があると思いますので、最初はある程度幅広く検討されてもよいのではないかと思います。ナノ粒子の動向は今後個数濃度規制とも関係してくると思いますので、重要と思います。ナノ粒子の変動は時空間的には局所的なので、どのようにアプローチするのが良いかは要検討と思います。
  • 継続的かつ系統的な測定計画であり、微小粒子物質の2次生成挙動把握のための有用なデータが蓄積されるものと期待される。
  • 10nm以下の粒子に関する疫学的な知見がまとめられると有用だと思われる。
  • 発生源や濃度上昇の要因が明らかとなるように進めてほしい。
  • 【問】アンモニアの人工発生源は自動車以外にもあるのか。
  • 【答え】アンモニアの主要な人為発生源は畜産や堆肥(化学肥料)となります。また、人体からの放出も報告されており、これらはいずれも自動車排出ガスよりも排出量が大きいと見積もられています。しかし都市域においては、自動車等の人間活動に伴う発生源の影響を強く受けているのではないかと考えています。