東京都環境科学研究所

東京湾沿岸域における底層環境改善に関する研究(2022-2027年度)

令和5年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
東京湾沿岸域における底層環境改善に関する研究【継続】
研究期間 2022年~2027年
研究目的
  • (1)都内沿岸域における底泥酸素消費の把握とその抑制手法に係る知見の集積
  • (2)底生生物の生息状況の実態把握
研究内容
  • (1)都内沿岸域における底泥酸素消費の把握とその抑制手法に係る知見の集積
    東京都内湾において水質の現地観測を行い、底層溶存酸素の現状把握を行う。また、複数地点の底泥を採取し、室内実験により底泥酸素消費速度を推定し、酸素消費に影響を及ぼす因子を検討する。
  • (2)底生生物の生息状況の実態把握
    東京都内湾の複数地点で底生生物を採取し、生物生息状況を把握する。併せて、底層溶存酸素量や酸素消費速度と生物生息状況との関係を検討する。
中間評価 A:優れている       1
B:普通          4
C:改善の余地あり
D:計画変更ないし中止
評価コメント及び対応
  • 底層溶存酸素の鉛直プロファイルを年間を通して観測し、貧酸素層の消長とその原因を明らかにするとともに、底生生物の生息状況を観察し、解明すべき課題が多々あることを明らかにしています。
  • 底生生物の生息状況から、底層の酸素環境との関連が示唆されているとのことですが、St. 22の無生物状の例や、個体数密度、湿重量密度の傾向との不一致もあり、説明が不足していないか危惧されます。
  • 底層貧酸素の状態を年間を通じて測定し、実態を把握したことを評価します。
  • 基礎的なデータが着実に収集されているように思います。
  • 底層溶存酸素や底生生物生息状況の実態調査や底泥による酸素消費に関する基礎実験が着実に実施され、研究一年目として有用な知見が得られたものと思われる。今後は成果公表を積極的に実施されることを期待する。
  • (質問)強熱減量とはどのような定義でしょうか。
  • (回答)強熱減量は底泥中の有機物含有量の指標となる項目で、乾燥試料を高温で加熱し、減少した質量を%(パーセント)で表します。環境省の「底質調査方法」では、600℃で2時間加熱することとしており、本研究においてもその方法で実施しています。
  • 都内沿岸域における溶存酸素鉛直プロファイルを年間をとおして取得できたことは成果であるが、溶存酸素の消費と底泥の有機物含有量との関係を明らかにすることができなかったのは、やや残念である。都内湾部は深水域のみならず浅水域も生物の生息・再生産の場として厳しい環境であることが確認されたことは評価できる。
事前評価 A:優れている
B:普通          5
C:改善の余地あり
D:計画変更ないし中止
評価コメント及び対応
  • 前年度の調査の各データを通年で複数回観測して蓄積し、普遍性を確認することが予定され、長期計画の2年目としては妥当な計画だと考えます。
  • 前年度に関係やその原因が「不明瞭」とされた複数の課題をどのように解決するのかのプロセスが読めません。不明点を明確化するための工夫や新たな切り口の観察を検討する必要があると考えます。
  • 湾内の底層環境を網羅的に把握することと、環境改善に係わる知見を得ることとのバランスを考え、特徴的な観測点に絞り込んで改善策を探索する必要はないか、精査する必要があると考えます。
  • 継続して底層の酸素消費量のモニタリングを続けてください。底泥貧酸素が起きるメカニズムまで理解できるよう研究を続けてください。
  • (質問)化学的な酸素消費と生物学的な酸素消費の割合を検討されてはいかがでしょうか。
  • (回答)各調査地点の底泥酸素消費のメカニズム解明に向けて、ご指摘いただいたとおり化学的・生物学的酸素消費を検討します。
  • 昨年までの成果や課題に対応した調査の継続であると思います。流向・流速の測定には興味があります。
  • (質問)影響因子の絞り込みはどのように進めていくのでしょうか。
  • (回答)底泥による酸素消費の検討に加え、流向流速の測定により貧酸素水塊の移流を把握し両者の寄与を検討する予定です。
  • 2022年度の研究内容を継続的に実施する研究計画が立案されていると思われる。
  • 底生生物と溶存酸素等に関する相関関係をより詳細に調査する方法、あるいは他の要因との相関の可能性など現時点での仮説があれば示して頂くと研究計画が明確になると思われる。
  • 溶存酸素濃度分布の現地観測の継続は、基礎データの蓄積という点で意義がある。