東京都環境科学研究所

使い捨てプラスチックの削減による環境負荷低減の検証に関する研究(2023-2025年度)

令和5年度外部研究評価委員会 新規研究の事前評価結果

研究テーマ
熱分解GC/MSによるプラスチックの分析に関する研究【新規】
研究期間 2023年度~2025年度
研究目的 都が策定したプラスチック削減プログラムにおいて、廃プラスチック焼却量40%削減が2030年目標として掲げられている。リサイクルが困難とされる複合化(ブレンド、積層化など)された廃プラスチックに着目して、その成分分析や添加剤の使用について実態を調査し、廃プラスチックをリサイクル材料として利用する場合の課題などを整理し、都施策に寄与する情報提供を行う。
研究内容
  • (1)加熱炉内に既知の単組成のプラスチックを導入し、不活性なガスを通すことによって発生した炭化水素類をGC-MSで測定する。次に既存のプラスチック数種類を使って、一定の比率にブレンドし、加熱炉に導入して発生した炭化水素類をGC-MSで測定して比較する。組成の明らかな複合化した廃プラスチックについて熱分解し、発生した炭化水素類をGC-MSで測定して、プラスチックの種類を特定する。
  • (2)測定データの蓄積・データベース作成により、赤外データと合わせて複合化プラスチックの組成の推定を行う。
事前評価 A:優れている        1
B:普通           4
C:改善の余地あり
D:計画変更ないし中止
評価コメント及び対応
  • 複合化された廃プラスチックのリサイクルに向け、基材の組成・配合比や添加剤の自動判別技術の研究が予定されており、目的に沿った計画になっていると考えられる。
  • 同じ部局からの委託で進める「複合化された廃プラスチックのリサイクルに関する調査研究」と並行する形で、新たに別テーマで実施する必要性が理解できるような説明が必要と考えます。
  • 廃棄物総量に占める複合材の割合すなわち今回の調査研究の成果の影響度を早めに定量化し、効果の出やすい対策から優先的に検討、解決されていくことを期待する。
  • GC-MSによるプラスチックの組成分析は重要と思います。
  • 熱分解するといろいろな官能基やフラグメントなどが多く出てきて判別が難しいような感じがします。うまく熱分解してください。
    赤外法と比較可能なデータの蓄積をしてください。
    次年度以降の研究かと思いますが、不純物による干渉がどの程度妨害要因になるのか検討してください。
  • 複合的な手法を組み合わせることで、材質の選別の精度を向上できる点は、今後の展開に期待できると思います。
  • (質問)熱分解GC/MSによる方法は、他にない新たな分別の手法という理解でよろしかったでしょうか。
  • (回答)近赤外線分光光度計によるプラスチックの測定では黒色のプラスチック、複数の種類を積層したプラスチック、凸凹した表面形状のプラスチックでは測定が困難です。熱分解して出てきたガス成分からプラスチックの種類を特定する方法ですので、分別というよりは、分析手法となります。
  • 「複合化された廃プラスチックのリサイクルに関する調査研究」と関連しプラスチック分別手法に関する研究であると思われる。GC/MSによる計測手法に関する研究計画は妥当なものであると判断されるが、前述のNIRプラスチック判別機との関係性が若干不明確であるように思われる。相互補完的なものなのか、どちらかの優位性を調べるのか、その他の意図があるのかを明確にしていただきたい。
  • プラスチックリサイクルにおいてプラスチック分別の効率化が重要であることは理解できるが、前述の研究と合わせて2つのテーマとして実施すべきかという点で若干疑問残る印象である。計測手法の確立という観点から基礎研究としての意義は認められるが、一つの研究テーマとして統合することを検討しても良いかもしれないと思われる。
  • 近赤外線(NIR)分光光度計による複合化プラスチックの測定技術の研究を補完するものであり、廃プラスチックの全体を把握する基礎データとして評価できる。
  • (質問)熱分解GC/MSはプラスチック処理施設での選別への適用ではなく、研究室における調査研究に使用する分析方法であると理解してよろしいでしょうか。
  • (回答)近赤外線分光法はプラスチック処理施設の分別に使用されており、現場において短時間で連続的に処理できるが、熱分解GC/MSは実験室でプラスチックを粉砕後、時間をかけて分析する必要があります。プラスチックの形状が一定のものならば、熱分解GC/MSの結果をリスト化するなどにより、事前選別に利用することも可能と考えられます。/li>
  • プラスチック処理施設で近赤外線選別機により分別未定となる割合が多い場合は、実用的な選別プロセスを検討する必要があると思います。