東京都環境科学研究所

複合化された廃プラスチックのリサイクルに関する調査研究(2022-2024年度)

令和6年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
複合化された廃プラスチックのリサイクルに関する調査研究【継続】
研究期間 令和4~6年度
研究目的 都が策定したプラスチック削減プログラムにおいて、廃プラスチックの焼却量を40%削減が2030年目標として掲げられている。リサイクルが困難とされる複合化(ブレンド、積層化など)された廃プラスチックに着目して、そのライフサイクル全般でのリサイクルに関する実態・技術について調査研究を行い、都施策の具体的な方向性検討に寄与する情報を提供する。
研究内容
  • (1)複合化されたプラスチックの使用状況および組成・配合比などに関する調査
  • (2)各自治体における廃プラスチックの分別収集に関する実態調査と課題の整理
  • (3)複合化された廃プラスチックのリサイクルにおける資源循環(焼却量削減)とCO2排出削減からの検討
  • (4)複合化された廃プラスチックにおけるライフサイクル全般でのリサイクル方法の提案と実現性評価
中間評価 A:優れている      4
B:普通         1
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 廃プラスチックの分別収集やリサイクルについて実態を明らかにしたこと、及び、リデュースとリユースの必要性を明らかにしたことも評価します。
  • 【問】複合材質プラスチックの判別したうえでどのように活用(MR、CRなど)されるのでしょうか?
  • 【答え】廃プラスチック(特に積層フィルム)において複合材質プラスチックは広範囲に使用されていることは明らかになりましたが、廃プラスチック全体における積層フィルムの割合など定量的な内容については不明です。したがって、定量的なことには言及できませんが、定性的には単一材質として明らかな廃プラはMR優先活用、それ以外の廃プラはCR優先活用(CRの大幅な推進が必要)として推進することが妥当であると、考えております。
  • 設定された研究内容に対して十分な成果が得られていると思われます。NIRによる積層フィルムの判別に成功し、また廃プラスチックのリサイクルに関する詳細な検討が行われていると評価されます。
  • 【問】NIR手法の有用性は認められますが、実現場での適用についてはどのようにお考えでしょうか。
  • 【答え】従来NIR手法は複合材質に対しては判別不可として単一材質に対して限定して適用されていますが、今回複合材質プラスチックにおいて単一材質スペクトルの加成性をデータベースに反映させれば、複合材質プラの判別も可能であることが明らかになりました。このような知見や事例が積み重ねられれば、実現場においてもNIR手法の適用範囲はさらに複合材質プラスチックの判別にも応用されると考えております。
  • 様々な想定に基づいた定量的な評価が行われており、目標達成に向けた具体的な追加対策も示されていて、取組の目安を示せていると思います。一方で、定量的な結果が区部と多摩だけに分けられていて、各自治体の特徴が十分に反映されるような分析も期待されます(発表時間の関係で集約した結果だけが示されていて、実施には既に行われているのかもしれませんが)。
    ※補足説明 各自治体(23区、多摩地域の一部)に関する情報について:『家庭系・事業系ごみ(区収集分)におけるプラスチックごみ関連情報』として、①プラスチックごみの存在と分別状況(分類方法など)、②収集頻度・収集(回収)方法などについてまとめております。
  • 【問】分別意識の数値化については、具体的にどのような方法で推計されているのでしょうか?
    区市町村の分別方法なども大きく影響すると思いますが、どのような分別方法がプラスチック焼却量を減らす上でもっとも有効といった考察も可能でしょうか?プラスチック焼却量の40%削減目標の実現に向けて評価されていますが、廃棄物の排出量そのものはどのように想定されているのでしょうか?
  • 【答え】
    〇分別意識の数値化について:今回の例では、容器包装プラスチックが分別収集されている区部と多摩地域の自治体において、「容器包装プラ」の分別収集量(kg/人・年)を比較することにより、数値化しました。報告例では、<区部:6。2、多摩地域:10。6>ですので、多摩地域を“基準:1。00”とすれば区部の数値は0。58となりました。
    〇プラスチック焼却量を減らす分別方法について:本報告では述べていませんが、例えば、既に一部の自治体で実施されているように、効果的なリサイクルに結びつきやすいプラスチックとリサイクル困難なプラスチックを自治体から積極的に生活者にお伝えすることも有効ではないか、と考えております。
    〇廃棄物の排出量について:国内一般系廃プラ排出量(毎年発行される『プラスチックリサイクルの基礎知識』[(一社)プラスチック循環利用協会]の中の「プラスチックのマテリアルフロー図」の直近5年間(2017~21)の推移と東京都一般廃棄物廃プラ排出量(2017および2020年度)のデータから、東京都の「廃棄物の排出量」はほぼ一定であると仮定して、以後の検討を行っております。
  • 複雑な積層の判別方法を確立した点は高く評価できると思います。CO2削減や資源循環の視点での評価もわかりやすかったと思います。
  • 近赤外線分析により3材質系積層フィルムの構成材質とその配合量の推定が可能になったことは高く評価できる。また、プラ焼却量の2030年度40%削減目標について、リサイクルだけでは達成困難であり、リデュースとリユースの促進も不可欠であることを定量的に確認できたことは意義深い。
  • 【問】プラスチックのリデュース・リユースの促進については行政だけでは対応は難しいのではないでしょうか。
  • 【答え】ご指摘の通りです。リデュース・リユースはリサイクルに比べて、関連する事業者・生活者・行政において実に多様なアプローチが存在しており、それらの効果や寄与をリデュース・リユース全体として把握しにくい傾向があります。しかしできる限り、効果や寄与を定量化して「見える化」していけば、お互いに責任感が生まれ、好循環につながるのではないかと、期待しております。
事前評価 A:優れている      3
B:普通         2
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • プラスチック焼却量40%削減に向けて、リデュースとリユースの寄与を定量化することは重要と思います。
  • リデュースとリユースの実行可能性もできれば評価してください。
  • 2023年度の研究から一層の進展が見込まれる研究計画が策定されており、研究の継続性からの評価されます。
  • LCAの観点からリサイクルの有用性を検討することが重要だと思われます。焼却量40%低減の意義をLCAの観点から検証していただければと思います。
  • リデュースとリユースの効果を評価されるということで、更なる成果が期待される。
  • 【問】複合材質プラスチックの判別研究とリサイクルの展開が少しわかりにくかったです。プラを製造したり、使ったりする事業者に対してのメッセージに関係すると思いますが、どこまで総合的に取り組まれるのでしょうか?特に、リサイクルした素材を実際に使う事業者が東京都内もしくは近隣にあることが前提と思いますが、現状のサプライチェーンはどのようになっているのでしょうか?
  • 【答え】
    〇判別研究からリサイクルへの展開①:充分な説明に至らず、大変失礼しました。複合材質プラスチックの判別研究による成果は単なる知見にとどまらず、今後プラスチックリサイクルを考察する上での重要な指針につながる知見(本報告資料には2つの例示)と考えております。
    〇判別研究からリサイクルへの展開②:本研究はあくまで情報提供のレベルです。ただ、市場に存在するプラスチックは機能性・多様性・経済合理性あるいは生活者の利便性に非常に富んだ素材であるという事実を、最初に深く認識する必要があると考えております。
    〇リサイクルした素材を扱うサプライチェーンについて:現時点ではほとんど情報を持っておりません。ただ、廃プラリサイクルの課題(特にMR)はMRされて得られた素材がパレットや擬木以外の受容性が低いままで、今後の展開が見通せないことだと考えております。
  • 評価軸の明確化やリサイクル方法の提案に持っていく方向性は良いと思います。
  • リデュース・リユースの寄与の定量化では、具体例があるとわかりやすいと思いました。
  • 各種リサイクル方法に対する資源循環とCO2排出削減視点を含む評価軸の明確化は有意義な目標である。