東京都環境科学研究所

東京における地下水の実態把握に関する研究(2022-2024年度)

令和6年度外部研究評価委員会 継続研究の中間・事前評価

研究テーマ
東京における地下水の実態把握に関する研究【継続】
研究期間 令和4~6年度
研究目的 様々な地下水利用ニーズをふまえた新たな地下水管理手法の検討に資するため、地下水位や揚水量等、蓄積されたデータを活用し、揚水と地下水位等の関係性を長期的に分析する等、地下水の多様な実態を把握する。
研究内容
  • (1)揚水の影響予測
    東京大学と共同研究を行い、東京における揚水-地下水位-地盤の関係を精度良く再現できるシミュレーションモデルの構築に取り組む。前年度までの舎人層周辺にストレーナ深度を置く地下水位観測井についての解析を検証し、モデルの再現性及び地盤物性推定について検討する。
  • (2)地下水流動系の解明
    筑波大学と共同研究を行い、地下水や大気中のトレーサー成分を分析し、東京における地下水流動系の解明に取り組む。
中間評価 A:優れている      3
B:普通         2
C:やや劣っている
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 地盤変動予測モデル(1次元)が改善されたことを評価します。
  • 化学組成や炭素同位体分析をされたことはわかりましたが、「地下水が何処から来て何処へ行くのか?」という地下水流動の解明にどのように利活用されるのかがわかりませんでした。
  • 地盤変動予測モデルを改良し、地盤沈下の特性をある程度予測することが可能になったこと、地下水流動の実態を概略的に把握することができたことなど重要な成果が得られたものと評価されます。
  • 観測値と推計値は概ね合致する結果となり、一次元モデルの信頼性は高い結果となっているが、揚水の影響については十分に触れられていない。
  • 【問】一次元のモデルから三次元のモデルに拡張に向けて、非常に多くの追加的な情報が必要になると思いますが、そうした点への考察はどの程度進んでいるのでしょうか?観測だけでは特定できない要素(特に地下水流動)もあると思いますので、モデルによる把握と検証が必要になると思いますが、今後の見通しはどのようになっているのでしょうか?特に地下水の場合は流速がゆっくりの場合もあるので、解析に観測により長い時間が必要になるのではないかと思います。
  • 【答え】三次元モデルについては、現在共同研究者により、多数の水理地質モデルの統計集団を用いた地盤沈下解析を行い、地質情報の不確実性による地盤沈下予測の不確実性を確率的に評価する研究が進められています。また、この三次元モデルの境界条件を与えるため、更に広域の地下水流動を再現する必要があり、広域での水理地質構造の把握、地下水揚水量、揚水深度(ストレーナー深度)の正確な分布のデータ化を進めています。これらによる解析の結果は、東京都地下水検討委員会の場で議論されていくことになります。
  • 逆解析で得られた土壌の物性値が実際のデータと合ってきており、精度の検証が進んでいると感じました。
    台地と低地で特性が違っている点は興味深かったです。
  • 遺伝的アルゴニズムにかける自由度の制限の程度をどのように決めるかが気になりました。
  • 地盤変動予測モデルでは、これまでの結果を再解析することでより現実的な推定値が得られた。また、多摩台地部および区部低地部の地盤沈下特性を再現できたこと、また、区部南側の台地部と低地部とでは地下水の年代が異なることが明らかになったことは評価できる。
事前評価 A:優れている      3
B:普通         1
C:やや劣っている    1
D:劣っている
評価コメント及び対応
  • 地盤変動予測モデルにより、地下水の利活用と地盤の安定の双方のバランスがうまくとれるような提案を期待します。
  • 地下水流動の解明ができることを期待します。
  • 2023年度からの継続的な研究計画であることは理解できますが、最終年度ということで最終的な達成目標を明確にしていただきたい。
  • 【問】局所地下水流動・地盤変形連成モデルの作成に関する説明で、多数の確率的な推理地質モデルの統計集団を用いた地盤沈下解析と本研究で構築された1次元地盤変動予測モデルの関連が理解できませんでした。
  • 【答え】局所地下水流動・地盤変形連成モデルにおいて、多数の確率的な水理地質モデルの統計集団を用いた地盤沈下解析は、本研究で構築された1次元地盤変動予測モデルを3次元に拡大したモデルにより解析するものです。そのため、これまでの1次元モデルにより得られた知見(地盤物性値の初期値の値など)が3次元モデルにおいても援用されます。
  • モデルの拡張や調査対象地域の拡大を通じて研究が行われますが、かなりの時間を要する困難な取組であると認識しています。長期的な観点から研究計画を見直すといったことを検討されてもいいのではないかと思います。
  • 前年度までの結果を受けて、優先順位を付けて研究に取り組まれた方がいいのではないかと思いました。
    観測、モデルともにかなり困難な作業を計画されているので、これまでに取り組んできた分析結果をうまく使いながら研究に取り組んで下さい。
  • 3次元へ展開が進めば、活用の幅が広がることが期待できると思います。
  • 地下水を資源として保全・有効利用する地下水管理方策の立案に資することが期待される。