脱税の目的で製造・使用される「不正軽油」が大きな問題となり、環境局や主税局では平成12年から「不正軽油撲滅作戦」を実施し、大きな成果を上げてきました。しかしここ数年、不正軽油を識別するために重油や灯油に添加されている識別剤(クマリン)を分解除去した不正軽油の製造が増加しています。クマリンの分解過程では濃硫酸が使用されるため、硫酸中にクマリンの分解物や、重油中の硫黄分、アスファルト質、ゴム質などが溶け込み、これらが酸化・重合して硫酸ピッチと呼ばれるタール状の物質が生成します。
![]() |
![]() 不法投棄され、外にこぼれだした硫酸ピッチ |
硫酸ピッチは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」では特別管理産業廃棄物に該当しますが、処理に高額な費用がかかるため、全国各地で不法投棄され、環境に与える影響が危惧されています。
環境科学研究所は、硫酸ピッチによる環境汚染の実態を調査するため、環境局不法投棄担当と共に不正軽油の製造工場に立ち入りし、硫酸ピッチを採取して、分析を行いました。その結果、硫酸ピッチは非常に強い酸性を示し、環境中に漏出すると、土壌や地下水を酸性化するだけでなく、周辺の植物や河川の生物などへも影響を及ぼすおそれがあることが判明しました。
○ 環境科学研究所による分析例
|
![]() |
硫酸ピッチは、当初はタール状ですが、時間の経過とともに徐々に固化して、処理は一層困難になります。そのため、不正軽油の密造防止とあわせ、硫酸ピッチの不法投棄の防止、投棄された硫酸ピッチの撤去、処理、処分が早急に求められています。 <参考文献> 硫酸ピッチの性状分析 環境科学研究所年報 2003年版 不正軽油ならびに硫酸ピッチの分析結果 平成15年度全環研報告 (採取した硫酸ピッチのサンプル) |
環研TOPへ |