― デニーズで行っている食品ロス削減アクション「mottECO(以下、モッテコ)」は、どのようなものなのでしょうか?
「モッテコ」とは、食べ残したら持ち帰るという食品ロス削減のためのアクションで、環境省、農水省、消費者庁が推奨している活動です。デニーズでは、お客さまが食べ残したものをご自身の責任で持ち帰れるように、環境に配慮したFSC®認証の紙製容器を有料(一箱30円/2023年2月 時点)でご提供しています。単にごみを減らすことだけが目的ではなく、お客さまがそうした活動に価値を見出してくださり、習慣や行動の変容につながることを目指しています。
2021年5月から環境省と連携して34店舗でスタートし、2022年12月からは全店舗約320店に拡大しました。こうした取り組みを評価していただき、食品ロス削減環境大臣賞「mottECO賞」(2021年)などを受賞しました。
― なぜ取り組みを始められたのでしょうか?
きっかけは、2019年に施行された食品ロス削減推進法でした。店舗から出る生ごみは、主に3種類に分けられます。調理場から出る端材などのごみ、コーヒーかす、そしてお客さまの食べ残しです。調理場由来のごみは、自動発注の導入や販売数予測の精度を上げて無駄が出ない量を準備するといった企業努力でかなり減らせます。コーヒーかすは売れた分だけ発生し削減できないため、リサイクルを推進しています。他方、お客さまの食べ残しは、ご自身で持って帰っていただくことに食品安全上のリスクが懸念され、手付かずでした。しかし、今以上に生ごみを減らすためには、ここに取り組むしかないと考えました。
― モッテコ事業は、ロイヤルホストと一緒にスタートされました。競合他社とも言える企業との連携は、どのように始まったのですか?
食べ残しを持ち帰れることを、まずは社会全体に知ってもらう必要がありました。自社だけで行うより、ロイヤルホストと一緒にやることで社会的なインパクトがあると考え、共同の容器・オペレーションでの実施を働きかけたところ、すぐに賛同してくれました。以前から同業他社10社以上とともに、WWF主催の消灯イベント「アースアワー」に取り組んでいたので、すでに関係性が構築されていたことも大きかったですね。環境省とも連携し、2社での取り組みは同省の「食品ロス削減・食品リサイクル推進モデル事業」に採択されました。
―現在は4社によるコンソーシアムも立ち上げ、取り組みが広がっていますね。
ロイヤルホストと一緒に、1年目に120店舗くらいまで広げました。さらに、「和食さと」を運営するSRSホールディングス株式会社と日本ホテル株式会社が関心を示してくださっていたので、今後多くの企業に参加してもらうことも目指して、4社でコンソーシアムを発足しました。社会へのインパクトが大きくなるほか、共同の容器を使う仕組みによって、コストの低減や企業が参加しやすいといったメリットもあります。
また、こうした社会モデルを飲食業界に広めるためにも、当初は無償提供していた容器を昨年12月から有料化しました。国内にある飲食事業者のほとんどが小規模店で、今後容器のコストが参加の障害になることが考えられます。そのため先行事業者が有料化で実績を積み、そうした店舗も参加し易く、持続可能な仕組みにできればと考えています。
― 社内外からの反響はいかがですか? また、食品ロス削減はどのくらい進んでいるのでしょうか?
お客さまからは、多くの好意的な評価をいただいています。従業員へのヒアリングでも、「これまで自分で提供した商品を捨てることが悲しかったが、mottECOはそれを救う仕組みで嬉しい」といった声も寄せられました。現在、コンソーシアムとして750店舗で実施し、これまで累計7万件以上の持ち帰り実績があります。この店舗数で一年間に削減できる食品廃棄物は、約52トンにもなります。
― 今後、目指していることを教えてください。
さらに多くの方々に認知を広げるとともに、コンソーシアムを通じて企業や自治体などとの連携も広げていきたいです。ただ、一番大切なことはそもそも「食べ残しを出さないこと」です。残さず食べていただけるような工夫と努力を最大限行いながら、お客さまにもその重要性をお伝えし、最終的にはモッテコの容器が不要になるような社会を目指したいですね。
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