「からだにやさしいもの」「永く使い続けられるもの」「環境に配慮されているもの」の3つをテーマに、スキンケア・フード・日用品を中心に日々に寄り添うアイテムを取りそろえたエシカルショップを運営する株式会社hibino(https://hibino-meguro.co.jp)。同社で広報担当を務める細川峻麻さんに、事業立ち上げの背景や、大切にしたい思い、将来のビジョンについて、株式会社JTBとの協働で2023年11月18日に行われたワークショップの現場を訪ね、お話を伺いました。
──今回のワークショップは、どのような経緯で開催したのですか。
昨年「JTB地球いきいきプロジェクト」に参画していた他社の方に紹介いただいたことをきっかけに、JTBと協働で「戸越でエコ学び&まち歩き」というイベントの1コマとして、「みつろうラップづくり」のワークショップを開催しました。
みつろうラップとは、ミツバチの蜜から採れるみつろうを布に染み込ませた食品保存用ラップです。みつろうは、抗菌・保湿など、食品の鮮度を保持する効果が期待できるうえ、防水性に優れ、使用後は水洗いで何度でも使えるので、ゴミを出さずに済み、環境負荷の低減につながります。
みつろうのタブレットを布の上に並べ(左)、クッキングシートを敷いた上からアイロンで均一になるよう伸ばしていく(右)。「中央から外側に押し広げるように熱を加えるのがコツです」と細川さん。
今日は小学生を含め15名の方にご参加いただけました。初めは少し戸惑っていた方も、すぐに慣れて、2枚目、3枚目をつくるときは、グンと手際が良くなっていましたね。楽しんでいただけたようで、うれしく思います。弊社独自にも、こうしたワークショップを店舗で行うこともありますが、他社のプログラムに参画することで、日頃とは少し違う層のお客様にアプローチでき、非常にありがたい機会でした。
熱が冷めたら、布を傷めないようにクッキングシートを剥がす(左)。仕上がりはパリッとした硬さがあり、通常のラップとは少し違う印象だ(右)。親子で参加していた小学1年生の女の子は「下敷きみたい!」と笑顔を見せる。使用時は手の熱が加わることで、食器などに密着させることができるという。
──どのような思いで事業を立ち上げたのですか。
事業立ち上げの背景には、社長の吉川香織が子どものころから身体が弱く、食事ひとつとっても、さまざまな制限を強いられていたことがあります。いつまで生きられるかわからないと言われていた時期もあったそうですが、それを乗り越えて社会に出たとき、同じような健康上の悩みを抱えている人が多いことに気づきました。そこで、そうした悩みを改善するため、誰もが安心して使えるもの、食べられるものを広めたいという思いから立ち上げたのがhibinoです。私もその思いに共感してメンバーに加わりました。
──顧客との関係づくりに関して、どのような点に配慮、または工夫をされていますか。
店舗にお越しのお客様に対しては、単なる商品説明にとどまらず、先の3つのキーワードと絡めながら、その商品のコンセプト、あるいはブランド全体の背景を含め、丁寧にお伝えすることを心がけています。
どんなにエシカルに暮らそうとしても、私たちは消費行動から無縁ではいられません。だからこそ、消費行動そのものを地球環境や社会にとって良い動きにつなげたい。幅広い層へのアプローチとして、買い物という機会の活用はハードルが低く、とても効果的だと思います。お気に入りのものを長く丁寧に使うことが環境を守るためのアクションになる。これは弊社の基本姿勢でもあります。
さらに、そうした点まで深くコミュニケーションできたお客様は、リピートくださる率もやっぱり上がりますから、事業性の面でもプラスの効果が期待できます。
店舗では上質な素材を使用した心地よいものをセレクト。オーナーやスタッフが実際に使用して本当に良いと思ったものを取り扱っている。
──開店から間もなく3年を迎えますが、その間エシカル消費をめぐる世間の動きについて、どのような変化を感じますか。
エシカル消費が広まった部分と、まだまだな部分の両面があると感じています。コロナ禍を経て、多くの人がライフスタイルを見直していました。家の中を断舎離したり、外出を控えていた間は、「ついで買い」のような無駄な消費が減ったりする人も多かったようで、それは良いことだったと思います。
一方で、以前にも増してeコマースを多用するようになったり、飲食店のデリバリーサービスを利用するようになったりする人も増えました。そうすると必然的に余分な包装が増えてしまいがちです。ゴミを完全にゼロにするのは難しいと思いますが、弊社にできることとして、取扱商品の選定の段階で、脱プラを意識するなどしています。
──細川さんご自身の思いを含め、今後の事業に向けた抱負をお聞かせください。
互いを思いやる気持ちがあふれる社会にしたいと切に思います。自分さえ良ければ、という発想では、社会も地球環境も良くなるはずがありません。例えば、気候変動に関する温室効果ガス排出量をめぐって、先進国と途上国が対立したり、世界のあちこちで戦争が起こったりしていますが、平たく言えば、思いやりや譲り合いが足りないことが原因ではないでしょうか。
今すぐにはできなくても、100年後ぐらいには、そうした争いのない平和な社会になっていてほしい。そこに向けて、ごく身近なアクションとして、消費行動を見直す人が増えてほしい。hibinoを知っていただくことで、そうした思いを広げていきたいですね。
ワークショップの会場となったのは、環境を楽しみながら学べる品川区立環境学習交流施設「エコルとごし」。取材を行ったスペースの壁には、地域住民や子どもたちの100年後へのメッセージが飾られていた。
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